"家族はすき焼き、義姉だけが台所で水かけご飯を食べていた" 第9話
私のえ切った問いに、義兄は居たたまれなさそうに線を泳がせた。
「……母さんの言うこと、聞き流せばいいとってたんだ。『悪気はないんだから』って、真帆にさせれば、波がたないとってた。まさか、台所でをかけたご飯をでべさせられるまで追い詰められてるなんて、俺……気づかなくて」
「気づかなかった?」
喉の奥から、乾いた声がた。
「気づかなかったんじゃなくて、見ないふりをしてたんじゃないですか? 真帆さんが耐えてくれれば、自分が母親と衝突しなくて済むから」
太さんは息を呑み、言葉を失った。
「から、このは何も変わってないんですね。真帆さんからは労働と資産を奪い、私からは料とる権利を奪った。……直も、太さんも、お義母さんも。全員、同じです」
「遥さん、俺は別に、おたちを騙す片棒を担ぐつもり配――」
「同じですよ」
靴紐を結び終え、私はちがった。
「止めるチャンスは、いくらでもあったはずです。直が嘘をついているとっていたのに、今この席に座って、笑顔ですき焼きをつついていた。その点で、あなたも加害者のです」
太さんはもう、何も言い返せなかった。
私は度も振り返らず、瀬の玄関の引き戸をけた。
ガラガラと音をてて閉まった扉の向こうに、あの歪んだ族のすべてを置きりにして。
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駅までの暗い夜を、で歩いた。
息を吸い込むたびに、たい空気が肺の奥を突き刺す。
ポケットので、スマートフォンが絶えなく震え続けていた。
画面を見るまでもない。
直からだった。
『遥、頼むから話にてくれ』
『母さんも反省してる』
『でちゃんと話しおう。居で待ってるから』
画面に浮かびがる文字の羅列を見るだけで、吐き気がした。
反省している?
あの義母が?
数分に「男には々ある」「器がさい」と私を鳴りつけたが、反省などするはずがない。
直の言う「反省」とは、いつだって「そのを丸く収めるためのポーズ」でしかなかったのだ。
私は画面を伏せ、直の番号を着信拒否に設定した。
そして、そのまま居とは逆方向のに乗り込んだ。
向かったのは、入籍にで暮らしていた賃貸アパートだった。
居への完全な引越しは来週末に予定していたため、退続きはまだ完していなかった。
部に残っていたのは、処分予定だった古いカーテンと、数枚のバスタオル、予備の布団だけ。
え切ったフローリングに座り込み、膝を抱えた。
をつけようにも、リモコンを持つ指先が刻みに震えて止まらなかった。
結婚して、。
私の薬指には、まだ真しいプラチナの指輪がっていた。
で何度もジュエリーショップを巡り、内側に互いのイニシャルを刻んだ、あの指輪。
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『遥を事にするよ』
あのの直の、優しげに細められた目。
穏やかな声。
そのすべてが、過の子どもを隠し、養育費を踏み倒し、私の料をあてにするための「仮面」だった。
指輪を引き抜いた。
指の根元に引っかかる触すら耐えがたく、力任せに引き抜いて、たいのに放り投げた。
カラン、と乾いた属音が虚しく響いた。
涙はなかった。
ただ、自分の愚かさと、をで踏みにじられた屈辱で、全の皮膚が粟っていた。
翌朝、私は休暇を取得し、午のうちに居へ向かった。
直が勤して確実にのを見計らい、単用の軽トラックを配して、運び込んでいた私物のや本、の類をすべて運びした。
鍵をキッチンのカウンターのに置き、最に管理会社へ話を入れて、共同名義の解除続きを確認した。
淡々と、械のように作業をめる私を見て、引越し業者の作業員が議そうな顔をしていた。
けれど、を差し挟む隙など、1ミリも自分に許したくなかった。
午になり、自分のアパートへ戻ると、今度は見らぬ番号からの着信が画面を埋め尽くしていた。
留守番話のランプが点滅している。
再ボタンを押した。
『もしもし、遥さん? 直の叔母の典子ですけど』
親戚だった。
先の顔わせの際、義母の隣でよく笑っていた、あの親戚の女性。