"亡き娘の純金バングルを、義母は義妹の再婚費用にしようとした" 第18話
弁護士は類を枚ずつ確認し、鏡の奥の目を鋭くらせた。
「これは、極めて悪質ですね」
を交えない、専としての徹な言葉が、私たちにどれほどの勇気を与えてくれたかれない。
「婚姻費用分担請求、ならびに貞やDV、親族による精神虐待を理由とする婚調を即座に申してます。同に、くなられたお姉様の遺品に対する窃盗および横領未遂についての損害賠償請求も野に入れましょう。相方には、本付で受任通を発送します」
弁護士は奈緒の目をまっすぐに見つめた。
「これ以、夫側およびその親族が、あなたやご実に直接連絡を取ることは法に禁止されます。すべてこの事務所が窓になりますので、森奈緒さん、あなたはもう、彼らの言葉に怯える必は切ありません」
「……はい」
奈緒の声には、もう迷いはなかった。委任契約に署名し、捺印する娘のは、度も震えなかった。
弁護士からの受任通が届いたの夕方から、森の崩壊は崩のように加速した。
田からの制裁は、容赦のないものだった。元の名であり、礼節を何よりもんじる田にとって、者の形見を着して披宴にようとしていた嫁など、族の恥以の何物でもなかった。
式への巨額のキャンセル料、特注ドレスの違約、結納の即返還。
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総額で百万円くにのぼる請求が、森の実に突きつけられた。
由梨は部に閉じこもり、毎のように「お兄ちゃんのせいでがめちゃくちゃになった」と健太を罵り続けた。千恵子は、自の娘の玉の輿が瞬で消えったショックで寝込み、所や親戚から「の娘の形見を盗んで売りばそうとした浅ましい」とい目で見られるようになった。
世体を何よりもし、の尊厳を踏みにじってまで守ろうとしたその見栄が、自らのによって々に打ち砕かれたのだ。
健太からは、弁護士の制止を無して、私の実の固定話や奈緒の職の代表番号へ、何度もすがるような話が入った。
『奈緒、頼むから話をさせてくれ!』『母さんも由梨も反省してる! 俺が悪かった! もう度やり直そう!』『借の肩代わりなんて、もう度と言わないから!』
だが、度めきったに、その言葉はただの障りな雑音にしかならなかった。
奈緒は話にることすら拒否し、すべて弁護士を通して淡々と処理させた。「これ以、職や活圏に接触を図るなら、警察へ接禁止命令の続きを取る」弁護士からの最通牒を突きつけられた健太は、ついに完全に沈黙した。
婚の続きは、驚くほど迅速にんだ。責配偶者である健太側に抗弁の余はなく、財産分与と慰謝料、そして遺品を持ちそうとしたことに対する解決を含めた公正証が作成された。
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緑の婚届に、健太の署名と捺印がなされて返送されてきたのは、枯らしが吹き始めたの末のことだった。
役所の戸籍係の窓で、奈緒は静かにそのを提した。
しい戸籍謄本が渡される。そこには、ぶりに戻ってきた娘の名が、凛とした文字で刻まれていた。
奈緒。
「……お母さん」役所のロビーで、奈緒が謄本を両で握りしめながら、私を振り返った。
その表は、あのマンションのリビングで恐怖に怯えていた姿とは、まるで別のようだった。目のの隈は消え、血の戻った頬に、穏やかなが宿っていた。
「私、しい部を見つけたよ。実のすぐくのアパート。来から、そこでで暮らすね」
「……で丈夫?」私がわず尋ねると、奈緒はし照れくさそうに、けれど力く微笑んだ。
「うん。会社も、正社員登用の試験を受けさせてもらえることになったの。お母さんに甘えるのは、もうおしまい。……でもね」
奈緒は私の腕に、そっと自分の腕を絡めてきた。
「しんどいは、ちゃんと言うから。『お母さん、助けて』って、しないで話するから。それだけは約束する」
「……ええ。いつでも来なさい。美しいご飯を作って待ってるわ」
私たちは顔を見わせて、さく笑った。たいが頬をかすめたけれど、繋いだ腕の温もりが、の寒さをよいものに変えてくれた。