"亡き娘の純金バングルを、義母は義妹の再婚費用にしようとした" 第4話
そのだった。
奈緒が、かれたままのさな段ボール箱のから、ひとつの桐箱を取り落とした。
乾いた音がして、蓋がれる。
「……あれ?」
奈緒の震える指先が、桐箱のを探っていた。箱の表には、墨で『美咲 歳の記』と私の字でかれている。
美咲が成を迎えた。決して裕福ではなかった私が、パート代を半コツコツと積みてて、美咲の誕に贈った純の細バングル。「お母さん、これ事にするね」と、美咲が泣いてんでくれた、あの腕輪が入っているはずの箱だった。
に入っていたのは、変したいクッション布だけ。
箱は、もぬけの殻だった。
「……奈緒。このは、どこへったの?」
私の声から、温度が消えていた。奈緒は青ざめ、信じられないものを見る目で空っぽの箱を見つめていた。
「うそ……ここに入れておいたのに。引きしの奥に、この箱だけは絶対にいじらないようにしまっておいたのに……」
奈緒は狂ったように段ボールのをひっくり返し、底までを入れて掻き回した。けれど、のを放つあのバングルは、どこにも見当たらない。
「触ってない……私、絶対に触ってないよ、お母さん!」
奈緒が泣き叫びながら私を見げる。その目には、嘘偽りのない純粋な混乱と恐怖しかなかった。
私はゆっくりとちがり、リビングの央につを見据えた。
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千恵子の目線が、らかに泳いでいる。健太はといえば、腕組みをしたままの点を見つめ、切をこうとしない。
「……お義母さん」
「な、何よ」
「美咲の成祝いのバングル、ごですね?」
「るわけないでしょ! そんな昔の物!」
千恵子は即座に否定したが、声がずり、喉仏が自然にいた。が咄嗟に嘘をつくの、絵に描いたような反応だった。
「そうですか。では、今すぐ警察を呼びます」
私はポケットから迷わずスマートフォンを取りした。
「は……!? 警察ですって!?」千恵子が目を丸くして叫ぶ。
「ええ。自宅に保管していた親族の遺品から、価数万円相当の貴属が消えています。これは確な窃盗事件です。業者を呼んだタイミングとも致していますし、指紋の採取も含めて鑑識に入ってもらいましょう」
「お、おい、ちょっと待てよお義母さん!」健太が慌てて駆け寄ってきた。
「警察なんてげさなこと……! 族ののことなんだから、話しいで――」
「族?」私は健太の目をたく見据えた。
「の娘の遺品を、命に無断で売り払おうとする棒を、私は族とは呼びません」
画面に『110』を打ち込み、発信ボタンのに親指を置いた。その瞬だった。
「待ちなさいよッ!!」
千恵子が鳴のような声をげて、私の腕を掴もうと突してきた。私は歩を引いてそれを躱す。
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千恵子はよろめきながら、ダイニングテーブルにをついた。その肩はりと焦りで激しくしている。
「……査定にしただけよ!」
千恵子のから、最悪の告がびした。
「は?」
「まだ売ってないわよ! 所の買い取り専に、いくらになるか見てもらいにっただけじゃないの!」
「……母さん!」健太が顔を覆った。止めようとしたが、もう遅かった。
私のので、何かが音をてて千切れた。全の血が沸騰し、界の輪郭が真っ赤に染まるような激しいり。けれど、私のからた声は、恐ろしいほど静かで平坦だった。
「なぜ、の娘の遺品を、勝に査定にす必があるんですか?」
「だから言ったでしょうが!」き直った千恵子が、逆ギレするように叫んだ。
「由梨ちゃんが! 来、再婚するのよ! 相は由緒あるお柄の次男坊なの! あっちの親御さんや親戚に恥をかかせないように、ちゃんとした支度と装飾品を持たせてやらなきゃいけないのよ!」
言葉の刃が、の奥をえぐる。
「由梨ちゃんはの結婚で苦労したの! 今度こそ幸せにならなきゃいけないの! それなのにあの子の貯じゃ、ドレス代もろくに払えないのよ! 健太がし融通してやるのは兄として当然でしょう!?」
「それで……?」私の声が、微かに震えた。
「由梨さんのドレス代のために、んだ美咲の形見を換しようとしたと?」
「使わないんだからいいじゃないの!!」
千恵子は悪びれもせず、胸を張って言い放った。