"亡き娘の純金バングルを、義母は義妹の再婚費用にしようとした" 第2話
302号。奈緒の部だ。
私は荷台の箱に駆け寄り、両で抱え込んだ。ガムテープで厳に留められた箱の隙から、微かに美咲の部と同じ、檀のりが漏れていた。
何が起きているのか。なぜ、命の当に、こんな業者が美咲の荷物を運びしているのか。
「この荷物は渡せません。私は、この荷物の持ち主の母親です」
「えっ、でも、契約にお名をいただいてますし……」
困惑する作業員をそのに残し、私は振り返ることもせず、エントランスの自ドアをくぐり抜けた。
エレベーターを待つさえ惜しく、階段を駆けがる。臓が激しく波打ち、呼吸が喉の奥で引き攣れた。
302号のにつと、玄関のドアがわずかに数センチ、いたままになっていた。隙から、属が擦れうようなたい声と、く押し殺した女の泣き声が漏れ聞こえてくる。
靴を脱ぐさえ惜しかった。ドアを押しけ、玄関のたたきにがり込む。
「奈緒!」
廊を抜け、リビングの引き戸をけ放った瞬の景を、私は忘れることができない。
フローリングのに、奈緒がへたり込んでいた。両膝を抱え、に置かれた最のひとつの段ボール箱のに覆いかぶさるようにして、全を刻みに震わせている。
そのすぐ傍らに、腕組みをして仁王ちしている義母の千恵子。
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ダイニングテーブルの子に座り、面倒くさそうにスマートフォンをいじっている夫の健太。
千恵子が、忌々しそうに奈緒のから言葉を吐き捨てた。
「いい加減にしなさいよ、奈緒さん! 業者のを待たせてるでしょうが! ただでさえ狭いなんだから、さっさとそのガラクタをどかしなさい!」
「……いや……これだけは……これだけは絶対にダメ……」
奈緒の爪が、段ボールのにい込んでいた。指先が真っに変し、擦り切れた布のように掠れた声で懇願している。
「これ……お姉ちゃんが……私に遺してくれた……」
「の物に、いつまで執着してるのよ! 縁起でもない!」
千恵子が奈緒の肩を乱暴に掴み、引き剥がそうと腕を振りげた。健太はそれを見ても、止めようともせず溜め息をつくだけだった。
「やめなさい!!」
私の声が、静かな内に鳴のように響き渡った。
全員のきが、ぴたりと止まる。
千恵子が目を見いて振り返り、健太が慌ててスマートフォンの画面を伏せた。にうずくまっていた奈緒が、涙と髪でぐしゃぐしゃになった顔をゆっくりとげた。
「……お、母さん……?」
奈緒の唇は青ざめ、頬には乾いた涙の跡が幾筋もこびりついていた。
「どうして……ここに……」
私は靴を脱ぎ捨てるようにしてリビングに踏み込み、奈緒と千恵子のに割って入った。奈緒の肩を抱き寄せると、その細い体が氷のようにえ切っているのがのひらを通して伝わってくる。
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「お義母さん。……今、私の娘に何をしようとなさったんですか?」
私の声は、く、震えていた。千恵子は瞬だけ怯んだように顎を引いたが、すぐに都の悪い空気を振り払うように、わざとらしく甲い声をげた。
「何って……子さん、納骨堂へっていたんじゃないの? 急に来るなんて非常識ねえ。私たちはね、こののいらない物を片付けてあげていたのよ」
「いらない物?」
私は元にある、奈緒が命がけで守っていた段ボールを見ろした。箱の表面には、美咲が勤めていた図館の蔵票が貼られていた。
「これは、美咲の遺品です。奈緒のものでも、ましてやあなた方のものでもありません」
「同じことでしょうが!」千恵子が眉を吊りげ、唾をばす。
「健太と奈緒さんは夫婦なのよ! 夫婦のに置いてあるものは、このの物! も埃をかぶせて所を取って、由梨ちゃんのしい活の邪魔にしかならないじゃないの!」
「……由梨さん?」
わぬ名に、私の考が瞬止まった。由梨――健太の妹。奈緒の義妹にあたる、あの派好きな娘のことだ。
なぜ、んだ女の荷物を処分する話に、義妹の名がてくるのか。
私が問い詰めるに、玄関のインターホンが鳴り、先ほどの買取業者の男性がおずおずとリビングのドアから顔を覗かせた。
「あの……すみません。でお母様とおっしゃる方に荷物を止められてしまいまして……本の買い取りはどうなさいますか?」