"「魚臭いから焼肉屋へ」30人を連れ去った義妹が広めた嘘" 第12話
「魚様に対するキャンセル料万円は、同窓会の経費ではなく、虚偽の報告によって舗に損害を与えた藤本理恵個の責任において、に全額を私費で支払うこと」
「……っ」
理恵が息を呑み、縋るような目を私に向けた。『しだけでも減額してほしい』『分割にしてほしい』。その瞳がそう訴えているのが、痛いほど分かった。
だが、私は度も目を逸らさず、氷のように徹な線を彼女の眉に据え置いた。
減額など、絶対にしない。これは、彼女が続く老舗の板をに沈めようとしたことへの、正当な代償だった。
「最に」
澤さんが、腕を組んでややかに告げた。
「幹事会から、参加者名が所属する全体グループチャットに向けて、以の内容の公式文を斉送信します。『藤本理恵による「魚が毒をした」という説は、私腹を肥やすための完全な虚偽であったこと』『魚様にはの瑕疵は切なく、舗は極めて正常に営業していること』『差額徴収および舗への損害賠償は、藤本理恵個の責任において全額処理されたこと』」
「それだけは……!」
理恵が顔をねげ、鳴のような声を絞りした。
「それだけは勘弁して……! 全員にそんなメッセージ送られたら、私、友達全員失っちゃう……! 元にいられなくなっちゃうよ……!」
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「あなたがやったのは、そういうことよ」
澤さんは眉毛つかさずに切り捨てた。
「あなたは魚に対して、同じことをしたの。かけて築いた信用を、から奪おうとしたのよ。自分の胸にを当てて考えなさい」
理恵は両で顔を覆い、机に突っ伏して嗚咽を漏らした。だが、そのにいる誰として、背を擦る者も、ティッシュを差しす者もいなかった。
の社会において、契約を破り、の信用を売りばしたに残されるのは、同ではなく、徹な清算だけだ。
理恵は震えるでボールペンを握り、の署名欄に、歪んだ文字で自分の名をき殴った。
翌の曜。午過ぎ。
昼の営業の仕込みを終えた私は、帳のパソコンをき、魚の事業用座のオンライン画面を更した。
画面が切り替わる。
入細の最段。
『10/24 10:45 フジモト リエ 振込 210,000円』
円の狂いもなく、万円が着していた。
健が裏で面した形跡はなかった。理恵が自分名義の定期預を解約したのか、あるいは活費から無理やり捻したのか。それはもう、私のったことではなかった。
私はプリンターから細を印刷し、理恵の署名がある契約の原本のにねた。引きしから事務用の赤いスタンプを取りし、インクをたっぷりと含ませる。
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バチン。
請求の控えの央に、「領収済」の鮮やかな朱文字が真っ直ぐに刻まれた。
勝ったという揚は、微もなかった。元に戻ってきた万円は、廃棄せざるを得なかった魚の命を買い戻すことはできないし、度傷つけられたの平穏を元に戻してくれるわけでもない。
ただ、条理に奪われかけたの輪郭を、法と事実の力で元の所へ引き戻した。それだけの、淡々とした作業の完だった。
「女将さん」
仕込みから、さんが顔をした。には、今朝から届いたばかりの、に輝く鮮な刀魚が握られている。
「所のさんから、さっき話がありましたよ」
「……さんから?」
「ええ。『朝の同窓会チャットの噂を聞いた。本当にすまないことをした、法事の予約、もう度お願いできないだろうか』って、消え入りそうな声でげてましたぜ」
さんはニヤリと笑った。
「断ってやろうかといましたがね。女将さんの顔をてて、『親父さんの代からの付きいですから、最の魚を用して待ってます』って答えておきました」
胸の奥に溜まっていたい澱が、ふっと溶けていくような気がした。
澤さんとさんが、約束通り全体チャットに厳密な訂正文を流してくれたのだ。そこから、商の毛細血管を逆流するようにして、真実が正しいスピードで広がり始めていた。
「ありがとうございます、さん。助かりました」
私がく礼すると、職は照れ臭そうにを掻いて厨へと戻っていった。