"「魚臭いから焼肉屋へ」30人を連れ去った義妹が広めた嘘" 第6話
幼い頃、仕込みの伝いをしていた私に、父がよく言っていた言葉だ。
『を抜けば抜いただけ、が濁る。腐ったものはどう繕っても悪臭を放つ。だから料理は、誰よりも正直じゃなきゃいけねえんだ』
父が命を削って守り抜き、私が必に引き継いできた「魚」の簾。それを、義妹は自分の遣い稼ぎとつまらない見栄のために、「毒をした」としてに売りばしたのだ。
許す?話しう?内だからと穏便に済ませる?
冗談ではない。そんなぬるい温で済ませられる線は、理恵が話で「魚臭い」と笑い、森田さんので「保健所に封鎖された」と吹聴した瞬に、完全に消し炭になっていた。
私はパソコンを操作し、エクセルで作成した損害賠償の内訳をいた。
、当調理済み材の廃棄損害:万千円(盛り付けに廃棄せざるを得なかった刺盛りわせ、先付、椀物等の原価)、臨アルバイト名の配件費:万千円(曜夜の特別および急遽の休業補償)、広貸切に伴う逸失利益:万千円(同、予約を断らざるを得なかった般客組分の平均客単価に基づく会損失)
計:万円。
契約に記された条項に基づき、過請求は円もしていない。仕入れ先への正当な支払いと、真面目に働いてくれたスタッフへの与を確保するための、血の滲むような実損額だった。
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印刷が唸りをげ、たい械音とともに枚の請求を吐きす。宛名は「〇〇同窓会 幹事代表 藤本理恵様」。に、魚の角印を寸分の狂いもなく真っ直ぐに押した。
そのだった。
ドスドスと、階へ続く階段を乱暴に踏み鳴らす音が響いた。居のドアが勢いよくき、休のスウェット姿の夫・健が血相を変えて事務所へび込んできた。
には、画面を点灯させたスマートフォンが握りしめられている。
「おい、奈緒! お、理恵に何送ったんだよ!」
番、健は鳴り散らした。寝起きの浮腫んだ顔に、焦りと苛ちが醜く張り付いている。
「さっき理恵から泣き叫びながら話があったぞ! いきなり万の請求を送りつけてきたって! あいつ、過呼吸になりそうなくらい震えてたんだぞ!」
私はパソコンの画面から線をげず、ややかにキーボードを叩いた。
「請求なら、昨交わした契約通りに送っただけよ。何かおかしなところがある?」
「おかしなところだらけだろ!」
健は机をバンと叩いた。
「万だぞ!? 妹から取るかよ! たかが同窓会の所を変えたくらいで、なんで実の妹をヤクザみたいに脅すんだ! 親戚にれたら、俺がどんな恥をかかされるか分かってんのか!?」
「たかが所を変えたくらい?」
私は指を止め、ゆっくりと顔をげた。
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夫の目を、真正面から見据える。
「健さん。理恵が昨、牛吉の座敷で同窓ので何て言ったか、ってるの?」
「は? ……焼肉がべたくなったから変えたって……」
「『魚で集団毒がて、保健所から営業止処分をらった』って言ったのよ」
事務所の空気が、ピシリと凍りついた。
健のが、の抜けたように半きになる。
「……え?」
「うちが毒をして厨を封鎖されたから、自分が泣きついて牛吉に席を用してもらった。の同窓全員に、そう説したの」
健の線が泳いだ。だが、この男のからたのは、妹の卑劣な為へのりではなかった。
「そ、それは……あいつも急に会を変えることになって、みんなに申し訳なくて、ちょっとから任せを言っちゃっただけだろ……」
「から任せ?」
私の声は、くをうように沈んだ。
「さっき、さんから話があったわ。来週の曜に予約が入ってた、お母様の回忌の法事。全部キャンセルされた」
健の顔から、サッと血の気が引いた。
「き、さんって……あの畳の? なんで……」
「商のLINEグループに、『魚で毒がて昨夜客が救急搬送された』って噂が回ってるんですって。さんは、親戚の、そんな噂のあるで法事はできないって泣いてたわ。そのも結婚記の予約やPTAの会が、次々とキャンセルされてる」