"「本当の父親です」と乾杯した夫、148万円の請求書には知らん顔" 第8話
会議に、完全な沈黙が落ちた。
エアコンの送音だけが、サーッと々しく響いている。同席していた各の幹部たちが、夫を軽蔑しきった目で見つめていた。
「佐伯さん」
藤沢さんの声が、段とくなった。
「野寺先が協力を約束されたというのは、本当ですか?」
夫の額から、粒の汗がポタリと類のに落ちた。
「あ、いや……それは……内々の話と言いますか……親族ですので……」
「親族なら、本の承諾も得ずに、数億円規模の公補助が絡むビジネス文に名を無断使用していいのか?」
岡田専務が机をく叩いた。バアン、という乾いた破裂音が響く。
「承諾はあるのか? 委任状はあるのか? 今すぐここでせるのかと聞いているんだ!」
夫は両を膝のに乗せ、震える指先を握りしめることしかできなかった。せるはずがなかった。そんなもの、最初からしないのだから。
「……ただの、営業トークの延で……」
夫のから、消え入りそうな声が漏れた。
「導入が決まったに、義父にをげて頼めば、娘婿の頼みなら絶対に引き受けてくれると……そうい込んでおりまして……」
「い込んでいた、だと?」
藤沢さんはくため息をつき、元の分いファイルをバサリと閉じた。
「なコンプライアンス違反だ。民企業同士の商談とはいえ、虚偽の記載で信用を仮装し、契約を利に運ぼうとした。
広告
これは営業トークなどという言葉で済まされる問題じゃない。らかな詐欺為だ」
「藤沢社! それだけは! どうかご容赦を……!」
夫が子から滑り落ちるようにして、テーブルに両をついた。プライドも何もなく、ただ破滅を恐れる営業マンの顔だった。
「本の説会は止します。また、貴社との商談プロセスは現点をもって無期限凍結とさせていただきます」
「そんな……! お願いです、もう度だけチャンスを! 械の性能自体は本物なんです!」
「性能以の問題だ。信頼できない商社から、数億円の設備を買う企業がどこにある?」
藤沢さんはちがり、切の躊躇なく言い放った。
「本件については、貴社の営業責任者および法務コンプライアンス部宛てに、正式な事実確認面を送付します。佐伯さん、お引き取りください」
夫はそのに崩れ落ちたまま、顔をげることができなかったという。会議をていく幹部たちのややかな音を、ただを見つめながら聞いていた。
その頃。私は刈内にある自社の調達部で、異様な空気をじ取っていた。
自席のパソコンで、業界内のオープンなサプライチェーン報ネットワークを確認していたときのことだ。の械加ネットワークの掲示板や、親しい協力の担当者から、穏な連絡がて続けに入ってきた。
広告
『佐伯さん、ちょっとにしたんだけど……ご主の会社、丈夫?』
話をかけてきたのは、私が昔から世話になっている脂成形の調達部だった。
「え? どういうことですか、さん」
『さっき、藤沢精さんの購買から連絡があってね。今回のコンソーシアムの設備選定、特定の商社をコンプライアンス違反の疑いで選考からすって通達が回ってきたんだよ。……その商社って、ご主が営業部をやってる会社だろ?』
臓が、トクンと嫌なね方をした。
「……本当ですか?」
『ああ。なんでも、技術提案の根拠にな虚偽があったらしい。業界内じゃもう噂が回り始めてるぞ。の元請けも絡んでる案件だから、をしたらご主の会社、の取引からも締めされるかもしれないって……』
受話器を握るが、じんわりと汗ばんだ。
あの朝の、夫の勝ち誇った顔が脳裏をよぎる。『藤沢社は親父さんの弟子だ。親父さんの娘婿である俺の頼みを無にするわけがない』『148万の宴会代? い先投資だったよ』
(まさか……)
私はすぐに自社の購買データベースを叩いた。夫の会社が過に県やの共同事業、あるいは周辺メーカーに提した公仕様や、過の入札関連のアーカイブを片っ端から検索する。
調達管理という仕事柄、私は政や業界団体の公文の追い方をっている。
過。夫が『型案件を受注した』とで自し、額なインセンティブでを買い替えていた期の資料を、つずつめくっていった。