"13年前に消えた母の手帳に、夫の昔の名前があった" 第8話
数の捜査員が集まり、モニターの画面を指差して激しく議論を交わしている。 やがて、捜査第課の係が、のオペレーターに向かってきくを振りげた。
のディーゼルエンジンが、響きのような轟音をげた。 巨な鉄の爪が、倉庫の奥、かつて資材置きのピットだった所のコンクリートのに突きてられる。
ガガガガガッ、と鼓膜を劈くような破壊音が響き渡り、煙のようなコンクリートのがいがった。
砕かれたコンクリートの塊が次々と掻きされ、そのの湿った黒いがわになっていく。
作業始から、分が過ぎた頃だった。
「待て! 止めろ!」
穴の底を覗き込んでいた鑑識員が、血相を変えて叫んだ。
が止まった。 静寂が、苦しく現を包み込む。
鑑識員たちがスコップを捨て、さなブラシとヘラを持ってのにび込んでいった。
青いビニールシートが何枚も広げられ、周囲の界を遮るようにてられる。
その隙から、の捜査員が、慎に持ちげたトレイが見えた。
透な証拠品保袋に入れられた、まみれの破片。
それは、の圧と湿気でボロボロに化しかけていたが、違いなくビニール製の防エプロンの切れ端だった。
そして、を払われたその布には、かつて母が夜なべをしてミシンで縫い付けた、見慣れた赤い糸の刺繍が残されていた。
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『川クリーニング』
「ああ……あああ……!」
父が喉を掻きむしるような鳴をげて、そのに崩れ落ちた。
たいので。 の届かないコンクリートの底で。
母は、ずっと、ずっと助けを呼び続けていたのだ。
その所をっていた男の温もりを、私は、自分の夫のものとして抱きしめてきてきた。
吐き気と涙で界が歪む、くからづいてくるパトカーのけたたましいサイレンが、私のを狂おしいほど引き裂いていた。
梨県警の霊は、言葉を失うほど静まり返っていた。
たいステンレスの台のに置かれた、い布。 そのにあるものを確認するために、私と父は震えるで歩み寄った。
数に及んだDNA型鑑定の結果は、残酷なまでに確だった。
旧材倉庫のコンクリートから発掘された骨は、に失踪した母、川千鶴のものと完全に致した。
鑑識課の担当者が、静かに布の端を持ちげた。 そこに横たわっていたのは、私がっている温かい母の面ではなかった。 という歳が奪いった、茶褐に変した蓋骨と、わずかに残るの繊維。
「……千鶴……すまなかった、すまなかったな……」
父が台の縁にすがりつき、崩れ折れるようにして泣き伏した。 しわだらけので、たい骨に触れようとしては躊躇い、ただただ詫びの言葉を繰り返す。
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私は、涙すらなかった。 ただ胃の奥が凍りつき、喉の奥がからからに渇いていく。
母は、どこかくのできていたわけではなかった。 しいを歩んでいたわけでもなかった。
あの、あの男たちのによって命を奪われ、の届かないのに埋められていたのだ。
司法解剖の結果、母の因は部の打撲による蓋骨骨折および脳挫傷と判した。 倉庫の事務所内で激しい争いになり、突きばされて資材の角にを打したと推測された。 そして、即ではなかった能性がいこと。 救急を呼び、適切な医療措置を受けさせていれば、助かったかもしれないという事実。
だが、あの男の父親は救急を呼ばなかった。 警察汰になれば、点検記録の改ざんが暴かれ、会社が破滅することを恐れたからだ。 そして、その隠蔽の現に、あのもいた。
刑事告発と捜査の続きは、淡々と、しかし容赦なくんだ。
すでに界している義父に代わり、体遺棄の共犯、および参考として、あのは警察署に柄を拘束された。 の事件であり、公訴効や当の認識のさについて捜査関による厳格な取り調べが続いていた。
弁護士を通じて届いたのは、あのからの「どうしても美奈に直接会って謝りたい」という懇願だった。
私は、留置の面会へ向かった。