みかん小説
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"13年前に消えた母の手帳に、夫の昔の名前があった" 第5話

「……あ、そうだ」

ちろうとする私を、老が呼び止めた。

「いしたよ。あの、社はで来たんじゃなかった」

臓が、鐘のように打ち鳴らされる。

「を運転してきたのは、息子さんだったよ。宮本とか名乗ってた、真面目そうな若い男だ」

目のが、真っ暗になった。

あの。 母が消えた2013の晦の夕方。

夫は、そこにいた。 義父と緒に、母を待ち受ける所にいたのだ。

ので、過の記憶が恐ろしい精度で繋がっていく。

2018の。 母が失踪してが経った頃の記憶。

私は夫に、こう言ったことがあった。

「ねえ、修平さん。駅の周辺ばかりじゃなくて、あの側の業帯の古い倉庫も探してみない? 母のりいの会社もあったみたいだし……」

あの、夫は何と答えた?

いつもの優しい顔で、私のをそっと撫でながら、切の迷いもなくこう言ったのだ。

「あそこはもう区画理で入れないよ。……美奈、お母さんは、そこにはいないよ」

あの声。 あの確信に満ちた、穏やかな声。

あれは、私を慰めるための言葉なんかじゃなかった。

あのは、っていたのだ。

母が絶対に、そこからきててくるはずがないことを。

島さんの自宅をた、甲府の空はすでに鉛の夕に沈んでいた。

吹きつけるたいが、涙で濡れた頬を容赦なく刺す。

息ができない。 喉の奥が引き攣り、胸の真んを鉄の杭で貫かれたような激痛がっていた。

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の晦、夫は母の最の所にいた。 義父とともに、母を待ち受けていた。

そして、に私が「あの倉庫を探してみたい」と言った、あのは私のを撫でながら、微笑んでいたのだ。

『お母さんは、そこにはいないよ』

吐き気がこみげ、私は肩の柱にをついて激しく嘔吐した。 胃のには何も入っていない。苦い胃液だけが、乾いたアスファルトを濡らした。

全部、っていたのだ。

あの、母がどこへき、誰と会い、どうなったのか。 それをりながら、あのは私の隣で、優しい夫を演じ続けていた。

「いつか、きっと分かるよ」 「諦めなくていいよ」

あの優しい声が、の奥で呪いのように何度も何度も霊する。

励ましなんかじゃない。 救いなんかじゃない。

あれは、私が真相にづかないようにするための、完璧な見張りだったのだ。

京へ戻る特急の内でも、指先の震えは止まらなかった。

膝ののバッグのには、母の帳、宮本修平名義の伝票、そして島さんの業務誌のコピーが入っている。

どうして、あのは私にづいたのか。 なぜ、も私と緒にいたのか。

その答えを、直接あののから聞かなければ、私は歩もへめない。

夜の過ぎ。 自宅マンションのドアをけた。

リビングにはかりが灯り、テレビから穏やかなニュースキャスターの声が流れていた。

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「美奈? 遅かったね。お義父さんのところ、変だった?」

ソファからちがった夫が、温めたタオルの入った籠をに持って迎えてくれた。 いつもの、寸分の狂いもない、完璧に善良な夫の顔。

私は靴を脱ぎ、鞄を抱えたまま、リビングのダイニングテーブルのまで歩いた。

「美奈……? 顔がすごく悪いよ。でもあるの?」

夫が配そうに眉を寄せ、私の額にを伸ばそうとする。

私は、そのを無言で払い除けた。

夫のが、宙で止まる。 「え……?」

私は鞄をけ、つの証拠をテーブルのに並べた。

つ目は、母が最に残した帳のコピー。 『美奈を、佐藤の息子と結婚させてはいけない 宮本修平』

つ目は、201312旬のクリーニング伝票。 顧客名『宮本修平』と、母が裏にいた『あの子の勤務先まで探りを入れてきた』というメモ。

そしてつ目は、今の夕方にに入れた、倉庫管理の業務誌。 『1231 佐藤社来訪。女性客1名同伴。運転・息子』

夫の線が、テーブルののに落ちた。

枚、また枚と、類の文字を目で追っていく。

夫の顔から、みるみるうちに血の気が引いていった。 唇がかすかにき、喉仏が自然にする。

部のから、テレビの音以のすべての活音が消えった。

「……修平さん」

私は、自分でも驚くほどえ切った声で呼びかけた。

「20131231。あなた、あそこにいたよね」

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