みかん小説
本棚

"忘れた財布が暴いた、娘の結婚の地獄" 第8話

娘は、その本当の自由のを、自らの力で掴み取ったのだ。

「ええ、そうよ。当然の権利よ」

私が頷いた、まさにその瞬だった。

廊に置かれた固定話の親が、けたたましい音をてて鳴り響いた。

ジリリリリリリン――!

張り詰めた沈黙を切り裂く、鋭いベルの音。 受任通が届くのは以のはずだ。 携帯話を着信拒否された純平が、逆して実へかけてきたのか?

娘が息を呑み、を固くする。

「丈夫。私がるわ」

私は娘の肩を度叩き、廊へと向かった。 受話器を取り、呼吸をくえてから、静かに名乗った。

「はい、でございます」

受話器の向こうから返ってきたのは、予していた男の声ではなかった。

『……あら、お母様? ご無汰しておりますわね』

く、ややかで、どこか相を見すような、ねっとりとしたの女性の声。 純平の母親――義母の森田夫だった。

『うちの純平から聞きましたのよ。さやかさんが急に実に逃げ帰って、警察まで呼んだんですって?』

息を潜める私に対し、義母はため息混じりに、棘を含んだ言葉を吐き捨てた。

『夫婦の些細な諍いで、警察だなんて……のお里がれますわ。世体というものをお考えにならないの?』

元で響く義母のねっとりとした声を聞いた瞬、私の背筋を氷のようなたさがり抜けた。

広告

……世体? お里がれる?

受話器を握るの指先に、爪がくなるほど力がこもる。 奥歯がギリリと音をてた。 リビングでは、顔の半分を青黒く腫らした娘が、怯えたようにこちらを見つめている。 あの子の痛々しい姿を界の隅に捉えた瞬、私の胸の底から、今まできてきて度もじたことのない激しいりが噴きがった。

息をく吸い込み、私はあえて、静まり返るほど徹な声で返した。

「お言葉ですが、お義母様。些細な諍いなどという易しいものではありません」

『……なんですって?』

「純平さんは、娘の顔面を力任せに殴打しました。頬の挫傷と顔面打撲、腕の鬱血。全治週の診断がています。警察も臨し、すでに暴力の事実が記録されています」

受話器の向こうで、息を呑む微かな気配がした。 けれど、義母は瞬のたじろぎのあと、すぐに甲い声を荒らげた。

『純平に限って、そんな野蛮なことをするはずがありません! ああ見えてあの子は昔から繊細で、会社でも責任あるを任されて、どれほどいプレッシャーので戦っているか! さやかさんが夫をてず、らせるような失礼な態度を取ったから、つい元が狂っただけでしょう!?』

元が狂った? らせるような態度を取ったから?

ので、何かが音をてて千切れた。

広告

字句、純平が娘に浴びせ続けてきた台と同じだった。 相を傷つけておきながら、その原因をすべて被害者に擦り付ける。 この母親の歪んだ溺と傲さが、あの男の化け物を育てげたのだと、肌の毛穴が総毛つような戦慄とともに理解した。

『男のにはプライドがあるんです。しばかりになったからといって、警察汰にするなんて非常識にも程がありますわ。所の方や親戚にられたら、純平のはどうなるんです? 私たち森田の恥です! 今すぐさやかさんを連れてに戻りなさい。親同士が集まって、しっかり言い聞かせれば――』

「お断りします」

私は義母の言葉を容赦なく遮った。

『な……っ、なんですって!?』

「親同士の話しいなど、切いたしません。娘が底怯えているに戻すことを、私は幸せとも、親の務めとも呼びません」

『さん! あなた、娘を婚させる気ですの!? 父親をくにくして、片親で育ったからそんな絡な――』

「ええ、そうです。娘の命と尊厳より事な世体など、この世のどこにもありません」

受話器の向こうが、りと屈辱で絶句するのが分かった。

「今のご連絡は、すべて弁護士を通じてってください。直接のご連絡や実への押しかけがあったは、受任通に則り、直ちに警察へ通報します。

失礼いたします」

相が何か喚き散らそうとした瞬、私は受話器をフックに叩きつけるように置いた。

ツーツーという無質な切断音が響く廊で、私は荒くなった呼吸を必にえた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: