"忘れた財布が暴いた、娘の結婚の地獄" 第6話
「うん。……久しぶりに、途で起きずに眠れたよ」
温かい噌汁とご飯を並べ、で向かいって座る。 娘が箸をかし、汁を啜った、私は胸のポケットから昨の喫茶で吉田さんから預かったメモを取りした。
テーブルのに置かれた、つ折りのい。
「……これ、何?」
「昨、吉田修さんと会ってきたの」
娘のがぴたりと止まった。 吉田という名に、あのの玄関先で跪いた純平の異様な姿が蘇ったのだろう。
「吉田さんの娘さんの、真奈美さんの連絡先よ」
私は吉田さんから聞いた話を、ありのままに娘へ伝えた。 8、純平が吉田さんの娘と結婚していたこと。 半も経たないうちに同じようにを監し、友を奪い、暴力を振るっていたこと。 発覚した、あの男が全く同じように座して泣き崩れ、「しすぎた」と言い訳したこと。
娘は元をで覆ったまま、息を呑んで聞き入っていた。
「吉田さんはね、連絡するかどうかはあなたに任せるとおっしゃっていたわ。無理に過を掘り返す必はない。でも、同じ経験をしたが、あなたの方でいてくれることだけはっていてほしいの」
娘はしばらくの、メモを見つめていた。 迷い、恐れ、そして現実を確かめたいという切実ないが、その瞳をき来していた。
「……連絡してみたい」
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やがて、娘ははっきりとした声で言った。
「私が悪かったんじゃないって、私のがおかしかったんじゃないって……ちゃんと、確かめたい」
そのの午、娘はメモの番号へメッセージを送った。 数分もしないうちに、真奈美さんから返信が届いた。 『今なら、会社の帰りに横浜駅くのカフェでお会いできます』と。
夕方、私は娘に付き添い、横浜駅の静かなホテルのラウンジカフェへ向かった。 私はあえてれた席に座り、だけの空を作った。
現れた吉田真奈美さんは、34歳。 グレーのスーツを着こなした、背筋の伸びた落ち着いた女性だった。 にい傷を負った特の怯えのようなものはなく、自分ので自してきているの凛とした空気を纏っていた。
真奈美さんは娘のマスク越しの腫れた頬を目見て、胸を痛めるように微かに眉を寄せた。 けれど、過剰に取り乱すことも、同の言葉を投げつけることもしなかった。 ただ静かに、娘の正面に腰をろした。
「さやかさんですね。……よく、ここまで耐えてこられましたね」
その言で、娘の目から張り詰めていたものが零れ落ちた。
真奈美さんは自分のバッグから温かいお茶のカップにを添え、淡々と、しかし噛みしめるように語り始めた。
「8、私もまったく同じでした。あのは最初、世界で番優しくて、私のことを誰よりも理解してくれるのように見えました。
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でも、結婚した途端に変わった」
「……仕事のことも、言われましたか?」
娘の震える問いに、真奈美さんはく頷いた。
「言われました。『おみたいな途半端な能力で社会にても、恥をかくだけだ』『俺の言う通りにしていればいいんだ』って。友達と会うのも、親に話するのも、すべて報告させられました。しでも連絡が遅れると、何件も着信が入って……」
娘の体がさく震える。
「そして、何かい通りにいかないことがあると、鳴り散らして物を投げ、をげました。殴られた、私が泣いていると、あのは決まってこう言うんです」
真奈美さんは、え切った声でその言葉をにした。
「『おが俺をらせなければ、こんなことにはならないんだ』って」
娘の喉から、ひっ、とい息が漏れた。 両で顔を覆い、肩を激しく震わせる。 字句、同じだったのだ。 あの男が吐き続けてきた言葉は、娘の落ち度などではなく、相を支配するために何もから使い回されてきた、ただの呪縛の台だったのだ。
「さやかさん、聞いて」
真奈美さんはを乗りし、娘のをそっと包み込んだ。
「あなたが悪かったことなんて、つもありません。あの男が暴力を振るうのは、自分のさと歪んだ支配欲のせいです。あなたのや言葉とは、何の関係もない」
娘は嗚咽を漏らしながら、何度も何度も頷いた。
何も自分を苛み続けてきた「私が至らないから殴られるんだ」