"引っ越しを手伝った父に5000円、夫が隠した同居計画" 第17話
私はそのおで、自分の会社にい駅のさな古マンションを買った。
1LDKの取りは、1で暮らすには分すぎるほど適だった。隅々まで自分の目が届くがあった。引っ越し当、私は約束通り全てを引っ越し業者にお任せした。
業者のたちは際よく箱をけ、しい具を組みてて、包装材のゴミまで全部片付けてくれた。私はただ荷物が運び込まれるのを眺めながら、必な指示をすだけだった。
1のあの、両親が汗だくになってやってくれた作業を、今回はプロが鮮やかに終わらせていく。夕方には、しい部はすっかり活できる状態にっていた。午6、部の呼び鈴が鳴った。
モニターを確認すると、父と母がっていた。私は、急いで玄関をけた。
「お父さん、お母さん、いらっしゃい」
母は、嬉しそうに入ってきた。
「お邪魔します。まあ、綺麗な部じゃない」
母は、キョロキョロと部を見回した。父は玄関の靴を揃えながら、し険しい顔でリビングを見渡した。私は、首を傾げた。
「え、何?」
父は、真顔で尋ねた。
「今は、何を運べばいい?」
私は1瞬キョトンとしたが、すぐに父の冗談だと気づいて吹きした。
「何も運ばなくていいよ。もう全部終わったから」
父は、言った。
「何も?」
私は、頷いた。
「うん。今は2に、ご飯をべに来てもらっただけ」
広告
母が笑いながら言うと、父はわざとらしくため息をついた。
「それならいいわね」
父は、言った。
「じゃあ5000円はもらえるのか」
母が呆れたように父の肩を叩いた。
「お父さん!」
私は1瞬だけきを止めたが、すぐにお腹を抱えて笑いした。
「ないよ、そんなの」
父は、冗談めかして言った。
「ない?ケチだな」
母は、笑った。
「お父さん、美紀は今働いてないでしょう」
父は、笑い返した。
「そうだったな」
3で顔を見わせて、私たちはしばらく笑い続けた。卓には、くのデパで買ってきたお寿司や惣菜が並べられた。
あの引っ越しののようにに座って弁当をべるのではなく、しいダイニングテーブルで向かいって座った。事の途、私は父に尋ねた。
「お父さん」
父は、私を見た。
「なんだ」
私は、聞いた。
「あの、お父さんが健太に『悔するなよ』って言ったでしょう」
父は、箸を止めた。
「言ったな」
私は、言った。
「健太、本当に悔したみたいだった」
父は、しだけくを見るような目をした。
「だろうな」
それから父は、私の方に向き直った。
「でもおはどうなんだ?」
私は、議そうに聞き返した。
「何が?」
父は、尋ねた。
「おは悔してるか?」
私は、部を見回した。自分で選んださな窓から差し込む、夕暮れの優しい。自分で選んだ座りの良い子。自分で選んだお気に入りの器たち。
広告
ここには、誰かの勝な予定も私を部品として扱う勝さもない。私ので選び取った、私だけの活がそこにあった。私は、はっきりと答えた。
「してない」
父は、満げに頷いた。
「じゃあいい」
私は、笑顔で返した。
「うん」
父は、言った。
「今度は自分が悔しないようにきろ」
私は、頷いた。
「してるよ」
母が、せかすように言った。
「2とも、せっかくのご飯がめるわよ」
父は苦笑いして、箸をかし始めた。
「はいはい」
私たちはまた笑いい、穏やかな事のを楽しんだ。あの、父の『佐藤君、悔するなよ』という1言に議な力があって、夫の運命を変えたわけではない。
父は夫の会社へ話もしなかったし、を止める権力も使わなかったのだ。夫の運命を変えたのは、それまで彼が何度も先にき込んできた、まだ誰も言っていない『はい』だったのだろう。
5000円での1を買ったことではない。親だからむだろう。妻だから署名するだろう。族だからをすだろう。自分が正しいとえば最には皆が従うだろう。
その1つ1つの『だろう』が積みなり、最に誰も『はい』と言わなくなった。彼の計画も結婚も初めて本当の姿を現したのだとう。婚が成し、しいマンションへ移りんでからさらに季節はんだ。
窓をけると、初のし湿ったが部のを通り抜けていく。
休の朝、私は自分のためだけにコーヒーを淹れた。お気に入りのマグカップでゆっくりとんだ。