"大手術の3日後、夫が勝手に進めていた旅館の経営移管" 第11話
差は、株式会社A-Hospitality。相澤真理子の会社だった。
由美が画面を覗き込み、息を呑む。 私は震える指でメールをいた。
無質なビジネス文の体裁をとったその文面には、相澤真理子の本性が余すところなく剥きしになっていた。
『弊社は貴社支配・望俊介氏とので締結された基本に基づき、すでに体制移に向けた専スタッフの派遣、マーケティングシステムの構築、プレスリリースの配等を完しております』 『仮に貴社の方な都により本プロジェクトが破棄される、弊社がこれまでに投じた初期稼働費用ならびに逸失利益として、百万円の損害賠償を請求いたします』 『つきましては、来たるレセプション期までに正式な業務委託契約へのご調印をく求めます。ご対応なきは、法続きへ移せざるを得ません』
「百万……!?」
由美が声を荒らげた。
「何言ってるの、この女! 契約も交わしてないのに、勝にを送り込んできて損害賠償!? 完全に恐じゃない!」
「野寺先」
私は静を保ちながら、類を見つめる司法士に線を向けた。
「これに、支払う義務はありますか?」
野寺先は、でさく笑いばした。
「円も支払う必はありません。契約が成していない以、損害賠償請求の根拠となる法関係がしません。
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ご主が勝に依頼したというなら、それはご主個とA-Hospitalityとのの債権債務関係に過ぎず、株式会社見荘が肩代わりする筋いは毛ないのです」
先は鏡の位置を直すと、徹な声で続けた。
「これは典型な恫です。病の経営者を脅し、パニックに陥れて判子を押させるための常套段ですよ。望さん、返信は私に任せてください。『契約締結の事実はせず、代表権のない者との交渉について会社は切関しない。当な銭求に対しては、法為に基づく損害賠償請求を含め、断固たる法措置をとる』と、弁護士名義で即座に内容証を叩きつけてやります」
「お願いします、先」
息を呑み、私は痛む腹部をで押さえた。
敵は焦っている。 のを塞がれ、システムの権限を奪われ、堀を埋められた相澤真理子は、力ずくで私を屈させようとしているのだ。
そして――あの男も。
そのの夕暮れ。 い音とともに、病のドアが乱暴にけ放たれた。
入ってきた夫の姿に、私は背筋を凍らせた。
やつれ果て、剃り残した無精髭が顎を覆っている。 充血した目は異様なを放ち、着古したスーツの襟元はだらしなく崩れていた。
「……由美ちゃん、席をしてくれ」
掠れた、湿った声。 由美は子からちがり、夫を睨みつけた。
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「嫌よ。お姉ちゃんに何の用? また脅しに来たの?」
「いいからにてろ!!」
夫が壁を殴りつけた。 ドスン、と鈍い破壊音が病に響き渡る。 護師を呼ぼうとナースコールにを伸ばす由美を、私は制した。
「由美、いいわ。ドアのすぐで待っていて」
「でも、お姉ちゃん……!」
「丈夫。先から預かった類もある。このは、私に指本触れられないわ」
由美は悔しそうに唇を噛み、夫を激しく睨みつけながら病をてった。 カチャリとドアが閉まる。
夫はパイプ子を引き摺り、私のベッドのすぐ脇に乱暴に腰をろした。 酒と煙の混ざった饐えた匂いが、病の清潔な空気を汚す。
「綾子」
夫は両膝に肘をつき、を抱え込むようにして私を見げた。
「お、本当に俺を破滅させる気か?」
「破滅?」
私は仰向けになったまま、え切った声で問い返した。
「破滅へのを歩んでいるのは、あなた自でしょう」
「伊豆の世体を考えろよ!」
夫はを乗りし、唾をばしながら叫んだ。
「観協会の会にも、温泉組の連にも、俺はもう挨拶回りをして案内状を配ったんだぞ! 『妻が倒れたから、俺がしい会社を入れて見荘をて直す』って、をげて回ったんだ! 今さら契約しませんでしたなんて言えるわけないだろ!」
「それが、あなたの言う『破滅』なの?」
「当たりだろ! 元で俺がどれだけ恥をかくか、おにはわからないのか!? 男のメンツを潰す気か!」
乾いた笑いが、私のからこぼれた。