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"大手術の3日後、夫が勝手に進めていた旅館の経営移管" 第9話

あなたが旅館の経費で京に通っていたことくらい、帳簿を見れば全部わかる」

夫は両でを抱え、荒い息を吐いた。 数秒の沈黙の、夫はを見つめたまま、絞りすように呟いた。

「……半くらいからだよ」

認めた。 悪びれる様子もなく、ただ追い詰められて吐きしただけの状。

「だが、仕事の話が先だったんだ! 俺は見荘をもっときくしたかった! なのにおはいつも俺を枠にはめて、しいことを何もやらせてくれない! 相澤さんだけが……真理子だけが、俺の能力を認めてくれたんだ!」

真理子。 もう名すら隠そうともしない。

「だからって、私の病気を利用して旅館を奪うの?」

「奪うんじゃない!」

夫は顔をねげ、勝極まりない理屈を叫んだ。

「おはもう働けないかもしれないんだぞ! だったら、俺が真理子と緒に旅館を継いで何が悪い! 俺が守ってやるんだから、謝されたっていいはずだ!」

「私がんだら、でこの旅館をに入れるつもりだったのね」

私の問いに、夫は線を逸らした。 そして、私のの奥に消えないであろう、残酷な言を吐き捨てた。

「……そうなったとしても、旅館は残るだろ」

目のが真っ暗になった。

旅館は残る。 私がのうが、誰が女将になろうが、箱さえ残ればそれでいい。 連れ添った妻の命など、この男にとって、旅館という利権をに入れるための障害物でしかなかったのだ。

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「ていって」

私は静かに言った。

「……あ?」

「今すぐ、この部からていって。度と私のに顔を見せないで」

「綾子、おい……」

「ていけって言ってるの!!」

由美が病のパイプ子を掴み、夫のにちはだかった。

「お姉ちゃんの体がどうなってもいいの!? 殺し! ていかないなら警備員呼ぶわよ!」

夫は舌打ちをし、憎々しげに私を睨みつけた。

「悔するなよ。もう戻りはできないんだからな」

捨て台を残し、夫は病をてった。

バタン、といドアが閉まる。

静まり返った病で、私は両で顔を覆った。 涙はなかった。 ただ、胸の奥底で、何かが完全に砕け散る音がした。

の歳。 信じていたパートナー。 そのすべてが、偽りだった。

だが、絶望に沈んでいる暇はなかった。

翌の午、見荘の帳にち寄っていた由美が、息を切らして病に駆け込んできた。 そのには、伊豆の印刷所から仕てがってきたばかりの、箔押しの豪奢な案内状が握られていた。

「お姉ちゃん、これ……!」

由美が震えるで差しした案内状の表。 そこには、太い朝体でこう印刷されていた。

『株式会社見荘・株式会社A-Hospitality 業務提携並びに運営体制 発記レセプションのご案内』

――週、曜、午。 所――見荘 本館広「富士の」。

来賓予定者として、元の観協会会、温泉組、主取引の支、旅代理の支社の名がずらりと並んでいた。

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そして、案内状の末尾。

『主催:株式会社見荘 統括責任者 望俊介』 『共催:株式会社A-Hospitality 代表取締役 相澤真理子』

週。

それは、執刀医から告げられていた、私の退院予定の翌だった。 『退院できたとしても、最週は自宅で絶対静。も歩も極力控えること』と厳しく申し渡されていた、まさにそのタイミング。

あいつらは、っているのだ。 私がその、ベッドから起きがることすらできないと確信している。

だからこそ、私がけないそのを狙い澄まし、元の名士や取引先をすべて集めて、既成事実をにらしめるつもりなのだ。

案内状を握りしめる私の指先が、りでく染まった。

――週。

私は案内状をベッドのに置き、痛む腹部に両を当てた。

「由美」

「……なに、お姉ちゃん?」

「リハビリの先を呼んで」

由美が目を見いた。

「え……? でも、まだ術目だよ? 歩くのだって禁止されてるのに……」

「週、私はあの広につわ」

私の声に、迷いはなかった。

「歩けなければ、子でもいい。ってでもく」

母が遺した見荘の真んで、あのが私のを奪いろうとしている。 それを、ベッドので指をくわえて見届ける気など、毛ない。

「自分ので乗り込んで、あの男と女の目ので、すべてを終わらせてやる」

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