みかん小説
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"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第10話

マンションのエントランスを抜け、エレベーターで階へがる。 属の扉がいた瞬、廊の先に灯るがの表札が見えた。 『Fujisawa』。 ローマ字で然と刻まれたアクリルプレートが、ひどくっぺらく、滑稽に見えた。

ドアをけると、芳ばしいガーリックとトマトのりが漂ってきた。

「あ、美咲。おかえり」 アイランドキッチンにつ健太が、フライパンを揺すりながら笑顔で振り返った。 リネン製のエプロンを着け、袖を肘まで捲りげた姿は、誰もが羨むような「理の夫」そのものだった。

「どこってたんだよ。LINEも既読にならないし、配したよ」 「……仕事の調べ物。表参のカフェにいたの」

「そっか。お疲れ様。今夜は美咲の好きなペスカトーレ作ったよ。ワインやしてあるから、先に座ってて」

健太は交じりにパスタをい皿へ盛り付け、ダイニングテーブルへ運んだ。 テーブルのには、昨夜と同じように、あのiPadがてかけられている。 画面には、のオンライン送画面がかれていた。

「美咲、の朝イチで業者に振り込む段取り、もう済ませておきたいんだ」 健太は子を引き、私を座らせると、自分も向かい側に腰をろした。 フォークを私の元へ差ししながら、至極もっともらしい、落ち着いたトーンで語りかけてくる。

「さっき業者と話で最終調したんだけどさ、キッチンを最のアイランド型にするプラン、ギリギリで資材が押さえられたんだよ。

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これで美咲も料理がしやすくなるだろ? 来週曜の着に向けて、今夜に百万円を僕の座にまとめておきたい。アプリですぐできるだろ?」

フォークのたい属の触が、指先に伝わる。 私はフォークを机に置き、健太の目をじっと見つめた。

「健太さん。そのリノベーション、本当にこの部でやるの?」

健太の笑顔が、ほんの数ミリだけ凍りついた。 だが、すぐに眉尻をげ、困ったような表を作ってみせる。

「何言ってるんだよ、美咲。昨も話しただろ? 僕たちのを綺麗にするんだよ。美咲がになる気持ちもわかるけどさ、僕に任せてくれれば違いないから」

「持ち主の許は取ったの?」

部のの換気扇の音だけが、急にきく鳴り響いた。 健太の瞳の奥から、ふっとが消えた。

「……持ち主って、何の冗談だよ。ここは俺が買った部だって、昨も説しただろ」

「嘘よ」 私の声は、自分でも驚くほど静かで、平坦だった。

バッグから、つ折りにしたを取りし、テーブルのに置いた。 昼、法務局で発してもらった《登記事項証》。

「昨、法務局へってきたわ。権利部甲区、所者の欄にかれているのは、あなたのお名じゃない」

健太の線が、片に吸い寄せられる。 【所者 澤真由】の文字を捉えた瞬、彼の首筋の血管が、ピクンとねがった。

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数秒の沈黙。 やがて健太は、げさにいため息をつき、フォークを皿に放りした。 カチャリと障りな属音が響く。

「……勝に法務局なんてったのかよ。美咲、そういう探偵みたいな真似、夫婦としてどうなんだ?」

「探偵みたいな真似?」 私の喉の奥から、乾いた笑いが漏れそうになった。 「自分のんでいるの所者が誰なのか確認することが、そんなにいけないことなの? あなたは独代に自分で買ったって、私に嘘をついたじゃない」

健太は苛ちを隠そうともせず、乱暴に髪をかきげた。 だが、この男の恐ろしいところは、ここからでもまだ平然と「しい物語」を捏造できるところだった。

「……わかったよ。全部話すよ。確かに名義はあいつのままだ」 健太は腕を組み、さも仕方のない事があったかのように、滔々と語り始めた。

「当、宅ローンの控除枠とか、あいつの親の贈与の絡みで、節税のためににあいつの名義にしただけなんだよ。の部分をしたのは俺だ。婚するときに名義を俺に戻すもできてた。ただ、類の続きがあいつの都で遅れてるだけなんだよ」

「類の続きが遅れてるだけ?」

「そうだ。俺はあいつからこの部を買い戻す権利を持ってる。だからリノベーションしたって何の問題もない。美咲から預かる百万円も、その買い戻し資とリノベ費用に充てる予定だったんだ。

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