"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第9話
それは、まさにこの半の私自だった。健太の優しい笑顔に甘え、プロの言葉だからと検証を怠り、信じているふりをして考を放棄していたのだ。
「澤さん」私は震える唇を噛み締め、真っ直ぐに彼女を見返した。「退の続き、絶対に予定通りめてください。夫に猶予を与えたり、再契約したりしないでください」
真由さんはし目を見張り、それから柔らかく、けれど確固たる笑みを浮かべた。「もちろんよ。契約満の期に、渡しが完しなければ、即座に渡請求の訴訟を提起するよう弁護士に配してあります。けをかける気は切ありません」
「ありがとうございます。……私も、自分の戦いを始めます」
カフェをた、初のたいが頬を打った。空は鉛に曇り、今にもがりしそうだった。
ポケットのでスマートフォンがく震えた。画面をくと、健太からのメッセージが表示されていた。
『内装業者から最終確認の連絡があった。曜の朝イチじゃなくて、の曜の午に付を振り込まないと契約を流すって言われたんだ。美咲、今夜帰ったらすぐに、アプリで僕の座に百万円振り込んでくれ。の未来のために、頼むよ』
の未来。その文字を見つめながら、私はえ切った指先で画面を閉じた。
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のには、法務局の登記事項証と、澤真由さんから受け取った退通のコピーがある。
もう、納得したふりをするのは終わりだ。私はく息を吸い込み、嘘で塗り固められた「私の」へとを向けた。
真由さんと別れたで、私は渋のオフィスにあるさな法律事務所のドアを叩いた。
曜の夕方。急な相談を引き受けてくれたのは、女性の婚や産トラブルを専に扱う弁護士、由紀先だった。 デスクに座る先は、私が差しした健太の「資計画」と法務局の登記事項証、そして真由さんから預かった定期借の終通を交互に見つめていた。
「藤澤さん、結論から申しげますね」 先は鏡のブリッジを指先で押しげ、を交えない徹な声で言った。
「この『活資準備』なる類は、法に見ればあなたにとって危険極まりない切れです。絶対にサインしても、送してもいけません」
「……やっぱり、そうなんですね」
「ええ。文面には『将来な持分移転を期して』などと障りのいい言葉が並んでいますが、肝の物件に対する仮登記の申請義務もなければ、返還に関する担保条項も切ありません。そもそもの所物であるマンションに対して、ご主があなたに持分を移転させることなど法律能です」
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先の赤いボールペンが、計画の「百万円」という数字を鋭く囲んだ。
「もし言われるがまま百万円をご主の個座に振り込んでしまったらどうなるか。法には『夫婦の贈与』あるいは『活費・居費の拠』とみなされ、万が婚となった、その全額を取り戻すのは極めて困難になります。しかも、事などわれないまま現だけが使途になる能性が非常にい」
喉の奥が、ぎゅっと締め付けられた。 真由さんが言っていた言葉が、そのまま法律の専のから繰り返される。
「ご主は産のプロですよね。であれば、定期借の契約満も、物のリフォームが能であることも、百も承のはずです。っていてあなたに百万円を求している。これは過失や勘違いではなく――極めて悪質な、計算ずくの搾取ですよ」
「悪質な……」
「あなたが妻という、く疑えない理を巧みに利用しています。度おを渡してしまえば、主導権は完全に彼に握られます。美咲さん、自分の財産とこれからの活を守りたいなら、絶対に歩も引いてはいけません」
事務所をると、ビルのから吹き抜けるがコートの襟元をたくすり抜けた。 ので握りしめたバッグには、先にコピーしてもらった法律相談の記録と、すべての証拠類が入っている。
帰らなければならない。 あの、あとで消える、の部へ。