"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第8話
もう産仲介会社と専任媒介契約を結んでいて、退はすぐにリフォームして売りにすことが決まっています」
「来……末?」
「ええ。契約どおりなら、あとかほどで退です。延も再契約も、絶対にあり得ません」
目のが、真っ暗になった。あと、か。
私たちがんでいる「婚の」は、あとで完全に消滅する。む所すら失われるのだ。
それなのに――あの男は何をしていた?
「美咲さん、顔が真っ青ですよ」真由さんの質な声が、くから聞こえる。
「健太は……」私の唇が震えた。「健太は私に、来週までに百万円をせと言っています。あの部をフルリノベーションして、私の持分を登記するからって。キッチンやタイルの見本を見せて、来週付を振り込まないと事がにわないって……!」
「……は?」真由さんの眉が、今初めて激しくねがった。その顔に浮かんだのは、純粋な戦慄だった。
「リノベーション? 私の持ちを? 退まであとかの賃貸物件を、所者の私の承諾もなしに事するつもりですって?」
「はい……昨、そのための資計画も見せられました」
真由さんは額にを当て、い、い溜め息を吐きした。その吐息には、底れないりと、過の苦い記憶が混ざりっているようだった。
「……信じられない。あの男、経っても何つ変わっていないのね」
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「どういうことですか?」
真由さんは子の背もたれにく寄りかかり、私の目をまっすぐに見つめた。その瞳の奥に、かつて同じ獄をわった者特の、暗いが揺れていた。
「美咲さん。あの男はね、最初から部をリノベーションする気なんてありませんよ」
臓が、たい氷の塊を呑み込んだようにえ切った。
「私が健太と婚した最の原因も、それでした。あの男はいつもそうなんです。『の将来のため』『もっと確実な資産形成のため』と障りのいい言葉を並べて、まず相にまとまった現を差しさせる。私に対しても、結婚当初に私の親からの遺産や預を『僕が括で運用してきなマンションに買い換えるにしよう』と執拗に迫ってきました」
真由さんの言葉が、昨夜の健太の優しい声と恐ろしいほどなりう。
「もしあなたが百万円を渡したらどうなるか、教えてあげましょうか?」真由さんは徹な声で、健太ののにある絵図を解きかしていった。
「あの男は、その百万円を自分の個座にプールします。そして来末、退期限が来てどうしても誤魔化せなくなった段階で、あなたにこう言うはずです。『が急に方針を変えて、ち退きを求してきた。当な求だけど、争うがもったいないから、別のいい物件に引っ越そう』ってね」
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「……っ」
「あなたの元から百万円はすでに消えています。主導権を握っているのは、現を預かっている健太です。どこに引っ越すかも、どんな条件の部にむかも、全部あの男が決めることになる。あなたが『話が違う』と抗議しても、『抗力だった』『の状況が変わった』と言い訳されて、煙に巻かれるだけ。美咲さん、あなたはおを騙し取られるだけじゃない。婚活の選択肢も、む所も、の自由も、すべてあの男に質に取られることになるのよ」
の先から、血の気が完全に引いていくのが分かった。震えが止まらない。りなのか、恐怖なのか、自分でも判別がつかなかった。
あの男が欲しかったのは、妻との豊かな未来なんかじゃない。自分のを縛られないための、自由になる潤沢な現。そして、自分に依し、自分の嘘を疑わずに資を差しし続ける、都のいい「スポンサー」だ。
「私が番悔しているのはね」真由さんは静かに、私の目を見つめて言った。
「おをしてしまったことじゃないの。違に気づいていたのに、波をてるのが怖くて、分からないまま納得したふりをしてしまったこと。あの、もっとく事実を突きつけて縁を切っていれば、あんな無駄なを過ごさずに済んだ」
真由さんの言葉が、私の胸の奥くに、楔のように打ち込まれた。
分からないまま、納得したふりをする。