"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第7話
それは私にとって、背の陣だった。
だが、返信は驚くほどく届いた。わずか分。
『メールを拝見しました。非常に驚いておりますが、あなたがその部の現の状況についてどこまでごなのか、私も確認しておく必があるとじました。本、代官の以のカフェでお会いできますか』
指定されたのは、旧通り沿いにある、閑静なブックカフェだった。
約束の分、私はの奥のボックス席に座り、えたアイスティーをに背筋を伸ばしていた。臓が肋骨の内側を激しく叩いている。
ちょうど。黒いトレンチコートをすっきりと着こなした、ショートボブの女性が内にを踏み入れた。無駄のない歩き方、なを宿した瞳。写真ので無邪気に笑っていた女性は、代半ばの、洗練されたプロフェッショナルの佇まいを纏っていた。
彼女は周囲を見回し、私と目がうと、微かに眉をかして歩み寄ってきた。
「藤澤美咲さんですね。澤です」「初めまして。突然の躾なお願いを聞き入れていただき、本当にありがとうございます」
澤真由さんはコートを脱いで向かいの席に腰掛けると、員ににブラックコーヒーを頼み、すぐに私を真っ直ぐ見据えた。
「単刀直入に伺います。あの男……健太から、何を吹き込まれているんですか?」
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その徹で淀みのない声に、私は細を弄することをやめた。バッグから、昨取得したばかりの《登記事項証》のコピーを取りし、テーブルのに静かに滑らせた。
「昨の朝、法務局でこれを取りました。夫は私に、あの部は自分が独代に全額して買った持ちだと説していました。ですが……所権は、澤さんの名義になっています」
真由さんは証を瞥すると、ふっとたい笑みを元に浮かべた。その瞳には、驚きではなく、い呆れと侮蔑のが滲んでいた。
「……やっぱりね。あの男なら、やりかねないとっていました」
真由さんはコーヒーカップにを伸ばさず、淡々と、しかし極めて確な事実を語り始めた。
「あの代沢のマンションは、私が結婚するに、私の独代の貯と、くなった父からの贈与をわせて全額括で購入した、私の特財産です。健太はどころか、円もしていません」
喉が鳴った。わかっていたこととはいえ、当事者のから突きつけられる現実は、あまりにもい。
「じゃあ……どうして健太さんは、今もあの部にめているんですか?」
「婚したとき、あの男は自分の名義で部を借りる審査が通らないだの、まとまった引っ越し資がないだのと泣きついてきました。私は刻もくあの男と縁を切りたかった。
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でも、引に追いして訴訟汰になるのも仕事に差し支える。だから……条件をつけたんです」
真由さんは革のトートバッグから、クリアファイルに挟まれた通の契約を取りした。表には、太い朝体でこう印字されていた。
《定期建物賃貸借契約》
「普通の賃貸借契約と違って、定期借契約は期が満すれば更されず、借主は確定に退しなければなりません。私は将来にあの部を売却して資化する予定でしたから、の猶予を与えて、期限付きで貸してあげていたに過ぎません。管理費や固定資産税相当額を賃として支払わせる特約をつけてね」
ので、パズルのピースが音をてて噛みっていく。健太が見せびらかしてきた「管理費の引き落とし履歴」。あれは持ち主としての支払いではなく、ただ妻に支払っていた「賃料」の断片だったのだ。
「あの……その契約の期は、いつまでなんですか?」恐る恐る尋ねた私の声は、かすかに震えていた。
真由さんはバッグからもう枚の類を取りし、私の目のに置いた。それは、弁護士名の入った《定期建物賃貸借契約終についての通》の控えだった。
赤字で記された退期を指先でトントンと叩きながら、真由さんは残酷な宣告をした。
「契約満は、来末です。
借借法の規定通り、半には内容証郵便で終通を送付し、あの男も受領しています。