"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第4話
「美咲、そこまで俺を疑うのか? 夫婦なのに? 証なんて今元にないよ。法務局にかないと取れない類だ。それより、ほら」
健太はスマートフォンを取りし、アプリの画面をスクロールして私の目のに突きつけた。 画面には、毎にこのマンションの管理組へ引き落とされている「管理費・修繕積」の履歴が並んでいた。
「見てみろよ。俺の個座から毎引き落とされてるだろ? 俺の持ちじゃなきゃ、誰が毎こんな払うんだよ。固定資産税だって俺が払ってきた」
画面に並ぶ数字を見つめながら、私のの片隅で、徹な理性が囁いていた。 ――賃貸の契約者だって、特約があれば管理費を負担する。 ――座からの引き落とし履歴は、所権の証にはならない。
相は産のプロだ。素を言いくるめるための「もっともらしい証拠」の提示の仕方を熟している。
「わかった。婚歴のことは、急に聞かされてショックだったから……しをやしたい」 私がそう言うと、健太はあからさまに堵の息を漏らした。 自分がこのをうまくコントロールできたと信じ切っている顔だった。
「ごめんな、驚かせて。でも、俺がしてるのは美咲だけだから。過はどうあれ、この部で美咲としい歴史を作りたいんだ。来週のリノベの資計画、予定通りめてもいいよな? 美咲の持分登記の続きも、僕が責任を持って司法士に配するから」
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健太は私の肩を抱こうとしたが、私は「お呂入ってくるね」とちがり、寝へと向かった。
夜。 隣のベッドから、健太の規則正しい寝息が聞こえてくる。
私は毛布をそっと抜けし、音を忍ばせてリビングへ向かった。 テレビボードの引きしの奥から、健太が保管しているマンションの類ファイルを探しす。 管理規約の冊子、エアコンの保証、災保険の加入証――。 どれだけ探しても、権利証(登記識別報通)はおろか、売買契約の原本すら通も見当たらなかった。
元に残ったのは、毎送られてくるはずの「固定資産税の納税通」すら入っていない、スカスカのファイルだけだった。 代わりに、郵便物の束の隅に、枚の古い気料の領収が挟まれていた。
そこには、この建物の正確な所が印字されていた。 『世田区代沢○丁目○番○号 メゾン・ド・セリーヌ』
私はスマートフォンのメモ帳に、建物の番と番号を打ち込んだ。 胸の鼓が、静まり返った部ので鐘のように響いている。
健太の言葉を信じるか、信じないか。そんな段階はもうとっくに過ぎていた。
の朝。 会社のを半使い、私は番い法務局の張所へく。 窓で数料を払い、この部の「真実の所者」の名を、自分の目で確かめるために。
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法務局世田張所の自ドアをくぐった瞬、乾いたの空気とトナーの匂いがをついた。
受付の発券で番号札を引き、申請にあの所をき込む。『京都世田区代沢○丁目○番○号 メゾン・ド・セリーヌ』
窓の職員に分証を提示し、数料の百円を支払う。「藤澤さん、証ましたよ」
渡されたのは、緑の特殊な模様が入った、独特の触りを持つ枚のだった。《登記事項証》――産の権利関係を公に証する、国の公式記録。
窓脇の狭い記載台に寄りかかり、震えるでを広げた。最初に目に入ったのは【表題部】。鉄筋コンクリート造、専面積平米。私たちが半暮らしてきた部の正確な輪郭。
そして線をその、【権利部(甲区)(所権に関する事項)】へと落とした。
臓が、の奥でドクンドクンと激しい音をて始めた。
【順位番号】1【登記の目】所権移転【受付】平成【権利者そのの事項】所者 澤 真由
……は?
目を疑い、何度も、何度もその文字を見つめ直した。澤、真由。
あのベッドのからてきた、ウェディングドレスを着て鍵を掲げていた女性のフルネーム。夫の「藤澤健太」という名は、甲区のどこを探してもたりともしなかった。
担保権や抵当権が記される【権利部(乙区)】にも線をらせる。