"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第2話
半に健太に連れられて初めてここに来たとき、私はその洗練された空に素直に嘆した。
「代半で世田にこれだけのマンションをで買えるなんて、本当に誠実で、堅実ななんだな」 そう信じて疑わなかった。
産コンサルティング会社で営業マネージャーをしている健太は、数字にめっぽうかった。 減税措置、利向、リノベーションの資産価値について、流れるように理然と語る姿は、広告代理でがむしゃらに働いてきた私にとって、何より頼もしく見えた。
『俺が代半のときに、をしっかり貯めて買ったんだ。し狭だけど、ローンはもうほとんど残っていない。美咲が良ければ、ここにそのままんでくれないか』
婚約した夜、健太はそう言って、この部の鍵を私に差しした。 私は賃を浮かせられるありがたさよりも、彼が築いてきた活の基盤に招き入れられたに胸を打たれていたのだ。
だが、あの箱のを見てしまった今、過の会話の端々が、毒針のように私の記憶をチクチクと刺し始める。
『美咲の独代の貯、どのくらいある?』
結婚してかが過ぎた頃、健太はワイングラスを傾けながら、ごく自然な調子で切りしてきた。 『僕の座にまとめて管理したほうが、将来の資産形成に利だとうんだ。
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それとさ、この部もそろそろ回りをにフルリノベーションしたいだろ?』
私は卒から必に働き、ボーナスもほとんど使わずに約百万円の貯を貯めていた。 広告代理の激務で体を壊しかけながら、自分の精神な防壁として守してきたおだった。
そのうち百万円を、リノベーションのと「将来の共名義登記のための準備」としてしてほしい、と健太は言った。
『美咲が資してくれた分は、ちゃんとから登記を変更して、美咲の持分を入れるから。そうすれば名実ともにの持ちになる。これからまれる子どものためにも、そのほうが絶対にいい』
健太は際よく内装業者のパンフレットを広げ、輸入タイルのサンプルやシステムキッチンの図面を私に見せた。 の未来を真剣に考えてくれているのだと、あのの私は疑いもしなかった。
ただ、ひとつだけ引っかかっていたことがあった。 先、義母の恭子が珍しく料理を持ってこの部を訪れたときのことだ。
玄関をけた義母は、靴を脱ぐなり、どこか怯えるような、探るような線で部の隅々を見回していた。 リビングに通しても、ソファの端に浅く腰掛け、まるでのに勝にがり込んだかのように落ち着かない様子だった。
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「健太、この部……いつまでこのままにするつもりなの?」 お茶を淹れていた私の背に、義母のひそひそ声が届いた。 健太はし苛ったように声を尖らせた。 「母さん、余計なこと言わなくていいから。美咲にも話はついてるんだ」 「でもねえ、向こうが承してるわけないでしょう。くどうにかしないと……」
私がトレイを持参してリビングに戻ると、義母は慌ててを噤み、引きつった笑みを浮かべた。 「美咲さん、健太はし見栄っ張りなところがあるけれど、しっかりした子だから。おのことは全部健太に任せておけば違いはないのよ」
あの自然な沈黙。あの線。 義母はっていたのだ。 この部に、私がらない「別の歴史」が刻まれていることを。
机のに置いたスマートフォンが震えた。 健太からのLINEだった。
『阪の商談、予定よりく片付いた。最終の幹線で今夜に帰れそう。美咲、来週にはリノベ業者への付、座をかせるようにしておいてね。僕たちのを、もっと最にしよう』
僕たちの。 画面に浮かぶその文字を見つめていると、胃の奥から酸っぱいものがせりがってきた。
私はスマートフォンを伏せ、リビングのかりを消した。 暗がりの、ダイニングテーブルの央に、あのベッドのから見つかった結婚写真を枚だけ、静かに置いた。
午過ぎ、玄関の鍵がガチャリと回る音が響いた。
「ただいまー。