"顔合わせの個室で、相手の母親は私の過去に怯えていた" 第18話
「青さん。の件で、確認したいことがあります」
その瞬。
ヒュッ、と喉の奥が引き攣るような音が響いた。
玲子さんだった。
「あっ……あ……!」
玲子さんはちがろうとして、裾を踏み、派に座卓にをついた。 ガシャン、とお猪が倒れ、のテーブルに酒が広がっていく。 だが、その汚れを気にする余裕すら彼女にはなかった。
目を見き、幽霊でも見るかのように野寺さんを見つめ、それから、私へと線を巡らせる。 その瞳に宿っていたのは、もはや傲さの欠片でもなかった。 底れぬ恐怖と、狂乱だった。
「どうして……どうして今、あのがここにいるのよ!?」
玲子さんのから、切り声が爆発した。
「あなた……仕組んだのね!? 娘を使って黒田に潜り込んで、私を脅す気だったのね! のことを夫にバラす気だったんでしょう!?」
帯の隙に差し込まれていた玲子さんのスマートフォンが、座卓ので激しく振した。 液晶画面に浮かびがった通。
『姉さん、野寺がそっちに向かった! く破談にして逃げろ!』
送信者の名は、はっきりと表示されていた。 ――宮本隆。
部のの全員が、その画面を見つめていた。
玲子さんはハッとに返り、慌てて携帯を掴んで胸元に隠そうとした。 だが、もう遅かった。
「……のことを、バラす?」
正彦さんの声が、をうようにく響いた。
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ちがった正彦さんの全から、それまでの温な父親の気配が完全に消えっていた。 国の企業をにわたって率いてきた経営者の、徹無比な差し。
「玲子。お、何を言っているんだ」
「あ、あなた、これは違うの! この女が……この女が昔、会社を嗅ぎ回って――」
「青さんは、元請けの会計事務所からの正当な依頼で、が社の帳簿を精査してくださっていたんだ」
正彦さんは歩、妻のへ歩み寄った。
「その青さんを『余計なことを調べる』として排除し、調査を引に打ち切らせたのは……おだったな、玲子」
「ひっ……!」
玲子さんは息を呑み、畳のに崩れ落ちるように腰を抜かした。
正彦さんは胸ポケットから鏡を取りしてかけると、野寺さんに向き直った。
「野寺さん。別で予定していた報告を、今ここでに聞かせてくれないか」
「かしこまりました」
野寺さんはビジネスバッグから、青いファイルを取りした。
「過期分の購買実績を精査いたしました。特定のカテーテル等の仕入れにおいて、同業社相より割から割く設定されていた差額分――総額およそ千百万円が、『販売促コンサルティング料』の名目で、同会社宮本企画へと流しておりました」
静かな声で読みげられる数字。 それは、玲子さんがひた隠しにしてきた罪のさそのものだった。
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「なお、宮本企画側からの業務報告、納品物、打ちわせ議事録等は切せず、税務も架空経費として加算税の対象となる極めて悪質な取引であると判断いたします」
「そ、そんな……隆が……隆が勝にやったことよ! 私はらない!」
見苦しく喚き散らす妻を、正彦さんは氷のような目で見ろした。
「宮本企画への振込依頼には、毎回おの跡で承認のサインがされていたよ。の担当者にも確認が取れた」
「あなた……!」
「青さんはね、、この正を真っ先に発見して、会社のために警告を発してくれた方だったんだ」
正彦さんはく、く息を吐きした。 その背には、信じてきた妻に裏切られた男の、い苦渋が滲んでいた。
「それを私は、おの『現が混乱している』という泣き言を信じて、調査を止めてしまった。……経営者として、これほど恥ずべきことはない」
「父さん……」
直さんが呆然と呟いた。 母親の元に広がる沼のような真実をに、直さんの顔はく抜け落ちていた。
そして、直さんは母親を見つめ、静かに、けれど決定な言を告げた。
「母さんは……梨さんのお父さんのことなんて、どうでもよかったんだね」
玲子さんがビクッと肩を揺らし、すがるように息子を見げた。
「直、聞いて頂戴、母さんはあなたの将来をって――」
「嘘をつくな!」
直さんの叫びが、個を震わせた。
「母さんは自分の罪を隠すために、梨さんと青さんを侮辱したんだ! 父親がいないことを盾にして、踏みにじって追いせば、自分の秘密が守れるとったから……! そんな浅ましい理由で、僕がしているたちを傷つけたのか!?」