"顔合わせの個室で、相手の母親は私の過去に怯えていた" 第15話
社の脊柱管狭症が悪化しておりましてね。の移が難しいため、顔わせの席が終わった直、同じ敷内の別で、私がまとめた調査報告と、宮本企画に対する返還請求の最終決裁をう段取りになっております』
やはり、そうだった。 正彦社は、庭の席を汚さないよう配慮しつつも、同じ、同じ所で、妻の親族が犯した正に完全に幕を引く腹積もりなのだ。
『正彦社は、顔わせのに会社の問題を持ち込むつもりはありませんでした。ですが……もし玲子様が、あなた方の尊厳を傷つけるような真似に及んだ、私はいつでも証拠の類を持って入する準備をしております』
「いえ、野寺様」
私は受話器を握り直した。
「ドアをけていただくのは、当初の予定通りので結構です。仕事の用件として、社をお呼びしください」
『……よろしいのですか?』
「はい。庭の席を壊すのは、私の役目ではありません。玲子さん自が、自分の吐いた嘘と傲さによって自爆する……それが、あの方にされるべき唯の罰です。私たちは、ただ事実としてそこに座っているだけで分ですから」
野寺さんは息を呑み、それから、く銘を受けたように呟いた。
『……承いたしました。は、定刻にお伺いいたします』
通話を終え、私はデスクの引きしをけた。
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番奥に切にしまってあった、黒い牛革の類ケースを取りす。
に入っているのは、の受領印が押された複写伝票と、当の作業誌の原本。 角はし擦り切れているけれど、そこに刻まれた数字と文字には、点の曇りもない。
私はケースの留めを静かにパチンと鳴らして閉じた。
決戦のの朝。
カーテンをけると、澄み切ったれの青空が広がっていた。 たいがベランダの格子を揺らしている。
ダイニングテーブルのには、炊きたてのご飯と、豆腐とワカメの噌汁、そして卵焼き。 いつもと何つ変わらない、私と娘の朝だった。
「お母さん、お噌汁おかわりある?」
すでに支度をえた梨が、お椀を差ししてきた。 仕ての良いチャコールグレーのスーツ。 インナーには控えめなのボウタイブラウス。 髪をろでつに束ねた娘の佇まいは、どこからどう見ても、誇りき職業そのものだった。
「はい、どうぞ。しっかりべておきなさい。今のお昼は、ゆっくりわってべられるような雰囲気じゃないかもしれないからね」
私が笑いながらお椀を受け取ると、梨もさく吹きした。
「そうだね。直さんからも朝番でメッセージが来てた。『胃が痛くて朝飯が喉を通らない』って」
「素直な子ね」
お玉で噌汁を注ぎながら、私はふと、の鴨居に掛けてある自分のに目をやった。
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昨夜、丁寧にアイロンをかけた、濃紺のウールジョーゼットのアンサンブル。 派さはないけれど、の良さと仕ての美しさが際つ、私の勝負だ。 梨の司法試験格祝賀会のに、清の台からびりるいで誂えた、切な着。
「お母さん」
席に戻った梨が、改まった声で私を呼んだ。
湯気の向こうで、娘がまっすぐに私の目を見つめている。
「今ね……向こうのお母様が何を言ってきたとしても、私のためにをげたりしないでね」
その瞳には、滴の迷いもなかった。
「私は直さんのことをしているし、緒にきていきたいとってる。でもね、お母さんのの苦労や、ひとりで私を育ててくれた誇りを踏み躙られてまで、に入れたい結婚なんてないから」
胸の奥が、いもので満たされていく。
「もし向こうのお母様が、お母さんの未婚の過を理由に私たちを見すなら……私はそので席をつ。検事としてじゃなく、青里美の娘として、あのたちを拒絶する」
私は箸を置き、テーブル越しに娘のたい両を包み込んだ。
「ありがとう、梨。でもね、なんてげないわよ。、度もげる必がなかったんだから」
私は娘の目をしっかりと見つめ返した。
「私はね、あなたのお父さんと結婚はしなかったけれど、あなたを産んだことを悔したはたりともないわ。