"顔合わせの個室で、相手の母親は私の過去に怯えていた" 第12話
私なお話でお答えすることはできません」
『……ええ、々承しております。守秘義務を盾にされるのは、プロとして当然のことです』
正彦さんの声は、るでもなく、むしろ納得したように静かだった。
『実はですね、青さん。弊社は現、医療器の輸入販売に関するコンプライアンスの総点検をっております。来度から適用されるたな業界指針にわせ、過の仕入れルートや、部への委託費用の見直しをめているところなのです』
医療器業界のコンプライアンス化。 製薬・医療器メーカーと医療関、あるいは代理とのの透な資移を取り締まる業界の自主規制ルール。 その波が、黒田メディカルにも押し寄せていたのだ。
『その過程で……過の帳簿を再調査したところ、数に特定のコンサルティング会社に対して支払われていた、額の使途が浮いたしましてね』
胃のあたりが、くなる。 同会社宮本企画――玲子の弟の会社だ。
『当、その取引に対してい疑問を呈し、詳細な証憑の示を求めた部の記帳担当者がいた。だが、何者かのによって調査は突然打ち切られ、資料は返却された……当の財務記録を辿るうちに、私はその担当者のお名をりました。それが、青里美さん、あなただった』
正彦さんは、くい息を吐きした。
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『当、私の角印が押された業務終確認が残っていました。だが……けないことに、私はその調査が打ち切られた経緯を、当はく追求しなかったのです。内から「現が混乱しているから度に戻してほしい」と懇願され、内の言葉を信じて決裁を通してしまった。……私の、経営者としての甘さでした』
正彦さんの告は、言い訳のない痛切な悔に満ちていた。 このは、妻の正に加担していたわけではない。 ただ、族への甘さと油断から、見過ごしてしまっていたのだ。 そして今、会社の続をかけた監査ので、過の膿と向きわざるを得なくなっている。
『私は先、当財務部を務めていた野寺に連絡を取りました。彼はすでに退職しておりますが、当の事を最もよくるです。彼に過の資料の突きわせを依頼したところ、彼もまた、あなたの名をはっきりと覚えていました。「あの、青さんの指摘を握りつぶすべきではなかった」と』
「……野寺様が」
『ええ。の顔わせの……実は、あの料亭と同じホテルの別で、野寺と落ちう約束をしております。私の持病の腰痛が悪化しておりまして、移の負担を減らすため、同じ所でをずらして社内調査の報告を受ける予定だったのです』
なるほど、と点がいった。
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あの料亭の扉のに野寺が現れたのは、決して偶然の奇跡などではなかったのだ。 正彦自が、過の清算のために彼を呼び寄せていたのだ。
『青さん。の席は、子どもたちの将来を決める私なです。そこで仕事の話を持ちすつもりはありません。ですが……もし許されるなら、、正式な業務委託の形で、のあなたの作業記録について、会社として証言をいただきたいのです』
正彦さんの誠実な申しに、私は静かに目を閉じた。
「分かりました、黒田社。元請けの会計事務所を通じて正式な請をいただけるのであれば、私が当作成し、法に保管している業務完報告の範囲内で、事実のみをお答えいたします」
『ありがとうございます……本当に、謝いたします』
正彦さんはくをげているようだった。 そして、最にポツリと、苦渋に満ちた声を漏らした。
『……内が、あなたのお名を聞いたから異常に取り乱し、破談を急ごうとしている理由も、ようやく分かりました。すべては、自分の罪を隠すためだったのですね』
「それは……私から申しげるべきことではありません」
『ええ。私が、夫として、経営者として、すべて決着をつけます。……、お目にかかれるのを楽しみにしております』
話は静かに切れた。
ツーツーツー、という発信音が、え切った事務所に響く。
私は受話器を置き、窓のの夜景を見つめた。