"顔合わせの個室で、相手の母親は私の過去に怯えていた" 第8話
品目あたり、割から割の乗せ。 しかも、その仕入れ伝票が起票されるのと全く同じタイミングで、毎決まったに、別の会社へ振込がなされていた。
名目は『販売促コンサルティング料』。 額は、毎きっかり百万円。 にして千百万円。 で千万円を超えるが、そのさな同会社へと流れていた。
私はすぐに、元請け事務所の担当者を通じて、裏付けとなる資料の提を求めた。
どんな業務がわれたのかを示すコンサルティング報告。 打ちわせの議事録。 あるいは、役員会でその支が承認された証拠。
企業の帳簿において、実態のない「コンサルティング料」ほど危険なものはない。 税務調査で否認されれば、加算税の対象になるだけでなく、役員の私流用を疑われる典型な項目だからだ。
だが、数に先方の社内窓から戻ってきた返答は、でをくくったようなものだった。
『これは代表夫のご親族が関与している正規の業務委託であり、社内続きは完している。部の作業員が細部を詮索する必はない』
代表夫。 つまり、黒田玲子のことだ。
現の担当者のその尊な態度に、私は違を通り越して、い警戒を抱いた。 「社内続きが完しているなら、その類を見せてください。
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証憑のない支は、私の作業底稿において『使途・架空取引の疑いあり』と注記せざるを得ません」
私は職業な原則を曲げなかった。 商簿記1級の資格しか持たない、ただの部の記帳係かもしれない。 けれど、数字の辻褄がわない類に目をつぶることは、私の誇りが許さなかった。
そして、その面を提した。
事態は唐突に、暴力な力によって断ち切られた。
元請け事務所のシニアパートナーに呼ばれ、応接に入った私を待っていたのは、申し訳なさそうに線を泳がせるパートナーの姿だった。
「青さん、すまないが……あの案件、先方から即止の連絡が入った」
『どうしてですか? まだ半分の照も終わっていません』
「黒田メディカルのトップから、直々にクレームが入ったらしい。『これ以の部精査は社内を混乱させるだけだ』とね。全資料を本に返却し、作業データを破棄するよう求められている」
理尽な幕引きだった。 会社のを正に吸いげているが、危を察してから圧力をかけ、調査を叩き潰したのだと直した。
私は事務所の指示に従い、預かっていた元帳や伝票をすべて段ボールに詰めた。 けれど、ただ泣き寝入りしたわけではない。 受託業務の完確認――業務が途で顧客都により打ち切られた事実と、私が指摘した保留事項が未解決のまま返却されたことを証する公な受領には、きっちりと相側のサインを求した。
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デスクののバインダーから、その黄く変した枚の複写伝票を取りす。
受領印の欄には、つの印鑑が並んでいた。 つは、代表取締役である『黒田正彦』の角印。 そしてもうつ、財務責任者の確認印の欄に押されていたのは――。
『野寺』
あの料亭の扉をけた、あの男性の苗字だった。
胸の奥で、カチリと音をてて全てのピースが噛みった。
黒田玲子は、あの、弟の宮本隆とともに会社のを抜いていたのだ。 そして、その正の導線にをつけかけたのが、私だった。
玲子にとって、私は単なる「息子の結婚相の母親」ではない。 かつて自分の悪事を暴きかけた、最も恐ろしい幽霊そのものだったのだ。
もし私が黒田に嫁ぐ娘の母親として、夫である正彦のに現れればどうなるか。 何かの拍子に、の審な帳簿の話がるかもしれない。 野寺という元財務部が今も会社の周辺にいるのなら、なおさらだ。
自分の築きげてきた名の夫という位。 世体。 そして弟の犯罪まがいの為。 その全てが、音をてて崩壊する。
だから、あの女は必だったのだ。 夫に気づかれるに、何としてもこの縁談を破談に追い込まなければならない。 だが、「あの母親は昔、私の正を調べようとした女だから」などと息子や夫に言えるはずがない。