"私を大学へ通わせた義母と、二十年前の750万円" 第17話
いつかを踏みして怪をするんじゃないかって、学で講義をしているもずっと配でたまらないの。これは、私自の儘。私の精神のために、エレベーターのあるに移ってほしい」
母は目をしばたたかせ、私の顔をじっと見つめた。 言葉を失っているようだった。
「それに、税のこともきちんと調べたよ」
私は淡々と、現実な制度の話を続けた。
「私が2,000万円でマンションを買ってお母さん名義にしたら、額な贈与税がかかる。だから、物件は私が買って、登記も私名義にする。所者は私。お母さんには、そこに『無償で使用貸借』という形でんでもらうの。これなら贈与税は円もかからない」
「使用……貸借?」
「そう。法に認められた、親族の適法なまわせ方。その代わり、毎の管理費と修繕積、それから費は、お母さんのとパート代から払ってほしい。賃はいらないけれど、々の維持費はお母さんが自分で負担する。どう?」
母の表が、目に見えて緩んでいった。 「全額を恵んでもらう」という屈辱から解放され、活者としての権利と義務が残されたことに、母の誇りが堵しているのが分かった。
「……でも、それじゃ彩子に何の得もないじゃないの」
「得ならあるよ。お母さんが健康できしてくれたら、それが私にとって番の利益。
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それに、あの世におは持っていけないからね」
私が笑うと、母はく息を吐き、湯呑みの縁を撫でた。
「……本当に、がつようになったわね。お父さんそっくり」
「じゃあ、決まり。どんな所がいいか、お母さんの希望を教えて」
母はし躊躇いながらも、元のメモに線を落とした。
「あのね……あまりくにはきたくないの。このの、いつもの商があって、お友達の顔が見えて、病院も歩いていける範囲。そんな贅沢な所じゃなくていいのよ。向きの窓があって、お布団が干せれば、それで分」
「わかった。じゃあ、来週、緒に見にこう」
翌週から、私と母の部探しが始まった。
産仲介の担当者には、あらかじめ条件を厳密に伝えておいた。 築数は古くても構わない。 だが、管理組が正常に能しており、期修繕計画に基づいた積が分に確保されていること。 エレベーターがスキップフロアではなく各階止であること。 内がフルフラット、もしくは簡易なスロープ設置でバリアフリー化できること。 そして何より、母が通い慣れた枚方の商から徒歩圏内であること。
軒目に見学した物件で、母のが止まった。
駅からバスで分、商の裏をし抜けた宅につ、築の階建てマンション。 壁の吹き付けタイルは綺麗に清掃され、エントランスのスロープにはすりが完備されていた。
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案内された階の角部。 玄関のドアをけた瞬、がすっと内を通り抜けた。
「まあ……るいわね」
母が声を漏らした。 側に面したきな掃きし窓から、初の柔らかな陽がリビングいっぱいに差し込んでいた。 取りは使い勝の良さそうな2DK。 キッチンはし古いが、入れがき届いており、油汚れひとつない。 浴の入りには段差がなく、引き戸になっている。
母はすりの触を確かめながら、リビングの窓辺へと歩み寄った。 網戸をけ、ベランダのすりに両を置く。
には、見慣れた商のアーケードの根と、くに広がる枚方の並みが見えていた。 よいが、母の髪をふわりと持ちげる。
「ここ、いいが入るわね」
母が振り返った。 その顔には、先週までの固く張った警戒はも形もなかった。 まるで、子どものように素直で、満ちりた表だった。
「お母さん、ここにする?」
私が尋ねると、母はし照れくさそうに、だがはっきりと頷いた。
「ええ。ここなら……階段の配をしないで、して暮らせそうだわ」
価格は、1,680万円。 仲介数料や登記費用、固定資産税の割り清算を含めても、1,850万円ほどで収まる計算だった。 残りの資は、入居のハウスクリーニングと、トイレと玄関のすり増設費用に充てる。 すべて、私の持ちの資の範囲内で、誰にも借りを残さずに完結する契約だった。