"私を大学へ通わせた義母と、二十年前の750万円" 第7話
現れた叔父は、数に法で見かけたよりも腹回りが回りきくなり、頂部の髪がくなっていた。 だが、物のスーツの胸ポケットから覗くのボールペンと、酒焼けした赤ら顔、そしての領域へで踏み込んでくるような尊な笑みは、記憶のの姿そのものだった。
「おお、幸子さんも! 元気そうで何よりだ。ちょっと老けたか? まあ、お互い様だな、がはは!」
叔父はどっかりと座に腰をろすと、勝にビールを注文し、おしぼりで首筋を拭った。 母はさく「ご無汰しております」とをげたきり、それ以声をそうとしない。
「それにしても彩子、派になったもんだな。学の准教授か。親戚の集まりでもがいよ。『うちの姪は学の先だ』って言えるからな」
運ばれてきたビールを喉に流し込み、叔父は満そうに息を吐いた。 それから、わざとらしくあたりを見回し、声を潜めてを乗りしてくる。
「で……速だが、このの話の話だ」
喉の奥で、何かがカチリと音をてた。
「会社の話ですね」
「そうだ。いやな、うちも今、きな転換期を迎えててな。ハウスメーカーの次請けに入れるかどうかの瀬戸際なんだよ。配管の特殊検査器を式揃えなきゃならん。これが導入できれば、向こうの仕事は泰だ」
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叔父は持参した革のセカンドバッグから、つ折りにされたA4用を枚取りし、茶ぶ台のに滑らせてきた。 表題には『事業拡に伴う設備投資計画』と雑把にワープロ打ちされている。 数字の根拠も、資回収のシミュレーションもない。ただ「必資:1,200万円」とだけ太字でかれていた。
「も向きなんだが、続きにがかかってな。来週の付の支払いににわんのだ。そこでだ、彩子」
叔父は脂ぎった顔に、ねっとりとした笑みを張り付かせた。
「お、2000万円持ってるんだろ? を買う算段をつけてるって聞いたぞ。そのうちの半分……いや、800万でいい。会社にに融通してくれないか? 内のだ。もちろん、ただでとは言わん。の定期よりよっぽどいい利息をつけて、で全額返すからさ」
母の呼吸が止まる気配が、隣から伝わってきた。 母は青ざめた顔で茶ぶ台を見つめ、指先を刻みに震わせている。
私は、差しされたを指先本で押し戻した。
「お断りします」
個の空気が、瞬で凍りついた。
叔父の顔から、わざとらしい笑みが剥がれ落ちていく。
「……は? なんだと?」
「個な融資もお引き受けできませんし、投資としても成していません。叔父さん、このには直期の決算も、キャッシュフローの計算も添付されていません。
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客観な返済原資がどこにあるのか、第者が見て判断できる材料がつもない」
「お、おいおい、彩子……」
叔父の眉がつりがり、声がく濁った。
「お、内に向かって何を偉そうに言ってるんだ? 私はおの叔父だぞ。父親の代わりにの板を守ってきただ。赤のじゃないんだから、決算だの何だの、そんな細かいことを並べてるもんじゃない」
「おを貸すのに、相が内だからこそ細かく確認するんです。曖昧な貸し借りで破綻したを、私は社会政策の現で何も見てきました」
「彩子、もういいから……!」
母が私の袖をく引っ張った。 その声はかすれ、恐怖に怯えているようだった。
だが、私は止まらなかった。 バッグの底から、枚のクリアファイルを静かに取りした。 に入っているのは、に母が振り込んだ、あの受取と契約の拡コピーだ。
「細かいことを曖昧にした結果が、これですよね?」
私はそのを、叔父の目のに叩きつけるように置いた。
叔父の線が、のに落ちる。 その瞬、男の目が信じられないほど見かれ、頬の肉がピクリと痙攣した。
「……な、何だ、これは」
「、父がくなった直に、母の座から設備管理へ振り込まれた750万円の記録です。契約には『に括返済』とあります」
私は叔父の目を、まっすぐに見据えた。
「叔父さん。この750万円、母にいつ返済されましたか?」
静寂が、個を押しつぶすようにりてきた。 換気扇の回る単調な械音だけが、やけにきく響いている。