"私を大学へ通わせた義母と、二十年前の750万円" 第6話
叔父は瞬言葉を濁したが、を引きせる見込みがあると踏んだのか、すぐに調子を取り戻した。
『……おお、そうか! 会って話せば分かってくれるよな。よし、じゃあ今週末、美いものでもいながら話そう。幸子さんも呼んでさ、久しぶりにで飯でもおうじゃないか』
「わかりました。所とは、こちらから連絡します」
それだけ告げて、私は通話を切った。
夜が、汗ばんだ額をやしていく。 私はバッグから再びスマートフォンを取りし、先ほど撮した振込受取の画像を画面に呼びした。
設備管理株式会社。 百万円。 そして、そのにある契約の文面。
『本借入は、平成末までに、元利均等にて括返済するものとする』
平成。 今からだ。
母の通帳の履歴に、百万円というまとまった入など、ただの度もしなかった。 返済された形跡は、どこにもないのだ。
叔父は「会社を守った」と言った。 だが、その実態は何だ? 母から毟り取った百万を踏み倒し、放置し、今また姪である私の蓄えに目をつけ、き父の名を騙ってを無している。
「……お母さん」
暗ので、私はさく呟いた。 なぜ、あのは何も言わなかったのか。 なぜ、自分の実を売り払ってまで面したを奪われ、返済もされず、古いアパートで膝を痛めながら、今もパートの仕事を続けているのか。
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答えは、週末の席で必ず暴きしてみせる。 私はスマートフォンをく握りしめ、駅の改札へと歩きした。
改札にICカードをタッチしたの子音が、やけにの奥に刺さった。
に揺られながら、私はスマートフォンの画面を何度もスクロールした。 画面に表示されているのは、母の押入れの奥から見つけした『銭消費貸借契約(控)』の画像だ。
貸主:幸子 借主:設備管理株式会社 代表取締役:隆志 額:百万円也 返済期:平成末
利息の記載はない。 担保の設定もない。 ただ枚、事務用の定型用に叔父の雑な跡と会社の丸印、そして母のさく震えたような自署があるだけだった。
法学部の同僚たちと交わす議論が、のをたく駆け巡る。 商事消滅効。民法改正の規定であれば、商為によってじた債権の効は。仮に民事の般債権として扱ったとしてもだ。 もの、催告もせず、法な請求もわれていないとすれば、この債権は法にはとっくに屑同然だ。 裁判を起こしたところで、叔父が言「効を援用する」とにすれば、それですべてが終わる。
……そんなことは、最初からわかっている。 私がりたいのは、法律の勝ち負けではない。
実のを売り払い、元に残った千百万円。
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その半分以を、なぜ母は、父がくなった直の混乱ので、義理の弟の会社に差しさなければならなかったのか。 「おのことはが考えるから」 あの、母が私に見せたあの毅然とした態度の裏で、体何が取引されていたのか。
その答えを握っている男が、週末、私と母を呼びしている。
胸の奥が、氷をみ込んだようにたかった。
曜の正午。 指定されたのは、京の繁華からしれた所にある、古びた本料理だった。
板がで切り盛りしているようなで、案内された奥の個には、あせた座布団と、煙の煙が染みついた聚楽壁が待っていた。
「彩子……本当に、私までく必があったの?」
隣に座る母が、膝のでさな黒い布バッグをく握りしめていた。 普段の買い物に着ていくようなな紺のカーディガン。 襟元を何度も指先で正しながら、母は落ち着かない様子で線を泳がせている。
「お母さん。叔父さんが『で話そう』って言ったのよ。逃げる理由なんてないでしょう」
「でも、隆志さんとはもう何も顔をわせてないし……今さら昔の話を蒸し返しても、いいことなんて何もないわよ」
「蒸し返すんじゃない。確認するだけ」
私がそう言った瞬、廊からドスドスとを鳴らす音がづいてきた。 引き戸が乱暴にく。
「いやあ、待たせたな! いや、が混んでてさ」