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"私を大学へ通わせた義母と、二十年前の750万円" 第4話

「彩子。学、受験するんでしょう?」

「……やめる。私の文系なんて、学費すぎるし。就職浪するか、専学を探す」

投げやりに答えた私を、母はまっすぐに見つめた。 その瞳には、親戚たちへのりも、夫を失った絶望も微も浮かんでいなかった。 あるのは、ただ静かでい決だけだった。

「学したいなら、学しなさい。おのことはが考えるから」

「でも……!」

「お父さんが、あなたのためにちゃんと遺してくれたのよ。だから、あなたは自分の将来だけを考えなさい」

その言葉を、私は疑いもしなかった。 父が分な命保険を遺してくれたのだと、私のために教育資を準備してくれていたのだと信じ切っていた。 だからこそ、私は罪悪に押しつぶされることなく猛勉し、学へみ、学院の博士課程まで駆けがることができたのだ。

だが、記憶の底に、ずっと引っかかっていたさな棘があった。

葬儀の数、叔父の隆志がで自宅へやってきた夜のことだ。 叔父は私を自にかせ、リビングで母ときりでい話し込んでいた。 襖越しに聞こえてくる叔父の声は、普段の尊な態度とは違い、どこか必で、押し殺したような響きを帯びていた。 「兄貴の名誉」「会社が潰れたら」「世体」――断片な単語だけが、微かにに届いた。

叔父が帰った、夜に喉が渇いて台所へりると、母がかりもつけずに茶ぶ台のに座っていた。

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背を丸め、両を膝のでく握りしめ、微だにせず暗を見つめていたあの姿。

あの夜、ので何が交わされたのか。

私は元に隠した振込用の付を、もう度盗み見た。 父の法が終わって、わずか週の付だった。

母は、夫をくした直、親戚からたい目を向けられながら、自分の両親が遺してくれたを売り払った。 そして、その売却代の半を、あの叔父の会社へと差ししていたのだ。

私の学費のためではなく。 では、体何のために?

「お母さん」

気がつくと、声がから零れ落ちていた。

「ん? なに、彩子」

母が古いアルバムから顔をげた。

「……ううん。喉が渇いたから、もう杯お茶もらおうとって」

言えなかった。 ここで問い詰めてしまえば、母が守り続けてきた何かが、決定に壊れてしまう気がした。 真相をるべきなのは、私だ。 だが、そのに確認しなければならないが、もういる。

母のアパートをたのは、夜のを回った頃だった。

駅へ向かうバスの窓に、灯のが流れていく。 私はバッグのからスマートフォンを取りし、画面を見つめた。 通話履歴を遡っても、その名はどこにもない。 最に言葉を交わしたのは、の父の回忌の法だったか。

隆志。 父の弟であり、設備管理の現任代表取締役。

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百万円の振込受取のコピーは、スマートフォンのカメラで撮し、データとして保してある。 あの借入は何だったのか。 なぜ、母の個資産が会社の座に渡らなければならなかったのか。 ので無数の疑問が渦を巻き、胸のあたりをたい鉛のように圧迫していた。

その、のでスマートフォンが激しく震えた。

画面に表示された着信表示を見て、私は息を呑んだ。

『 隆志』

あまりのタイミングの気さに、指先が凍りつく。 バスの乗客が数、私の元を瞥した。 私は慌ててボタンを押し、留所でりると、湿った夜が吹き抜ける歩の隅で通話ボタンをスライドさせた。

「……もしもし、叔父さん?」

『おお、彩子か! 繋がってよかったよ。急にすまんな、夜分に』

受話器の向こうから聞こえてきたのは、拍子抜けするほどるく、調子のいい声だった。 背景から微かに居酒のようなざわめきが聞こえる。

『いやな、親戚の筋から聞いたんだよ。お、学で准教授になったんだってな! いやあ、めでたい。のから学の先がるなんて、兄貴がきてたらどれだけんだか。親族の誇りだよ』

袈裟な賛辞が、の奥を滑っていく。 の父に対して、いつもどこか対抗を燃やし、母の自を嘲笑していた男の言葉とはえなかった。

「……ありがとうございます。

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