"頭からビール、五十人が平伏す" 第10話
広文は吐き捨てるように首を振り、顔を背けた。
「堅気からむしり取って罪を着せて、何が組のためだ……! 恥をれッ!」
同級たちの線が、勢子の胸元で揺れる、太いのネックレスへと注がれた。
自分たちからむしり取られたが、体何に化けていたのかを、誰もが悟った瞬だった。
そのだった。
階段のから、もうつの音が静かに響いてきた。
急ぐこともなく、段、また段と、建物の台を揺らすようなく確かな靴音。
広文の背筋が、氷を流し込まれたようにピンと直した。
若い衆たちも息を呑み、慌てて勢子からをすと、壁際へとがって直した。
い音が、け放たれた鉄扉ので止まった。
先に入ってきたのは、本の若・梶原だった。梶原は無言のまま扉の脇にち、々とをげた。
そして、その背から、仕てのいい濃紺のスーツをに纏った柄な男が、ゆっくりと部のにを踏み入れた。
竜会会、造だった。
若い衆たちは弾かれたように腰を直角に折り、に線を落とした。
勢子はからい起きると、壁際につ夫・広文のスーツの袖にすがりついた。
「ねえ……誰なのよ、あの……?」
広文はをげたまま、掠れた声で必に絞りした。
「会だ……! 姐さんの、旦様だ……!」
勢子ののが、真っに染まった。
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指先からスウッと力が抜け、広文の袖から滑り落ちる。
会の、女――。
息が喉の奥でヒュッと凍りつき、声がなくなった。
広文は握りしめていた黒い帳を、両で捧げ持つようにして造のへと差しした。
しかし、造はその帳を受け取ろうとはしなかった。
ゆっくりと歩みをめ、のすぐ隣につと、を見ろし、く言だけ告げた。
「……おが、決めろ」
その言葉を聞いた勢子は、助けを求めるように広文の背へと回り込もうとした。
だが、広文は無言のまま、たく歩横へとを引いた。
いつも威張り散らし、自分の傘のに匿ってくれていた夫に、完全に突き放されたのだ。
隠れる所を失った勢子の界が、絶望な恐怖でぐらりと揺れた。
は、ソファの同級たちと、に座る君代の方へと静かに向き直った。
「この町のたちから取ったおは、円も本にはあげません」
の澄んだ声が、静まり返った部を満たしていく。
「遅れ賃は、熊切さんのところから、皆さんへ全額返してもらいます。……君代ちゃんの借は、昨夜の約束通り、棒引きです」
同級が、信じられないものを見るように顔を見わせた。
造が、わずかに顎を引いた。
「それでいい。……熊切、聞いたな」
広文は壁際で、さらにくをげた。
「はいッ! 円残らず、返還いたしますッ!」
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ソファから鏡の男がちがり、君代のへと歩み寄ると、々と腰を折った。
「……君代、すまなかった」
これまで目を逸らし続けてきた同級が、初めて君代の目を真っ直ぐに見つめて謝罪した。
君代は涙を拭い、さく首を横に振った。
方だとっていた同級たちすら、自分かられていく。
勢子の拠ってつプライドが、音をてて々に砕け散っていった。
勢子はのへといずり寄り、すがるように両を伸ばした。
「……っ! 私たち、同級じゃない……っ!」
は、伸ばされたそのを、静かに見ろした。
帯のにねられたのは、微だにしなかった。
「を陥れてきたあなたのには、もう誰もちません」
勢子の唇が、わななきと震えた。
昨夜、宴会で嘲笑いながらに浴びせかけたその言葉が、今、そのまま鋭い切っ先となって自らの胸に突き刺さったのだ。
顔から完全に血の気が引き、勢子の膝がガクリとに落ちた。
勢いは止まらず、彼女はをうようにして、造の革靴の元へとすがりついた。
「か……会さん……ッ!」
だが、造は元の勢子を瞥すらしなかった。まるで端に転がるであるかのように、完全に無した。
造の徹なが、壁際につ広文へと向けられた。
「丸熊は畳め」
く、い宣告だった。
「この町のシマは、全部放せ。
……板をろして、俺の元でから直せ」
広文はに額がつくほどくを折った。
「……承いたしましたッ!」