"頭からビール、五十人が平伏す" 第4話
「おい……本当にヤクザのところへ連れてくのかよ」
「すげえな、見にこうぜ」
先の男たちが席をつと、残りの同級たちも、まるで残酷な見世物を覗き見る野次馬のように、お互いの背に隠れながら、ぞろぞろと扉の向こうへと続いていった。
宴会をると、絨毯が敷き詰められたい廊が奥へと伸びていた。
その突き当たりにあるきな製のな扉の隙から、く太い男たちの笑い声と、ち込める煙の匂いが漏れしてきていた。
勢子はい扉ので歩みを止めると、の首を掴んだまま、背の同級たちを振り返った。その顔には、最潮に達した虚栄が張り付いている。
の豪奢なドアノブに、勢子の毒々しい赤い爪がかかった。
「みんな、ちゃんと見てなさいよ」
勢子は背のギャラリーに言い放つと、全体をかけて製の扉を勢いよく押しけた。
の首を引に引きずりながら、煙のち込める部へとで踏み込んでいく。
「あんたの女がさ、私に恥をかかせたのよ!」
勢子の甲い切り声が、内に響き渡った。
むっとする濃なタバコの煙と、等な酒の匂いが混ざりった気が押し寄せてくる。
広な広の央には、く連結された宴会用の黒漆塗りのテーブルが鎮座していた。その両脇には、仕ての良い黒いスーツをに纏い、く刈り込んだに鋭いを宿した男たちが、然と隙なく並んでいた。
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その数、およそ。
静まり返っていた部に、突然び込んできた勢子の声が落ちた瞬、座の央に座っていたの男が、線を入りへと向けた。
彫りのい顔ちに、歴戦の修羅をくぐり抜けてきた者だけが持つ徹な威圧を漂わせた男――この方帯を束ねる巨組織・竜会の若、梶原だった。
梶原の細められた双眸が、入りで首を掴まれている女の姿を捉えた。
から浴びせられたビールの雫が滴り、肩から胸元にかけての最級島紬が無残に黒く濡れそぼった、その痛ましい姿。
「……っ!?」
梶原の息が喉の奥で止まり、その瞳が信じられないものを見たかのように見かれた。
次の瞬、梶原は弾かれたように座布団を蹴りばし、の体をね起きがらせた。
「姐さんッ! お疲れ様ですッ!」
鼓膜を突き破るような梶原の鋭い号令が、広の壁を震わせた。
ガガガガッ――!
脚の子と座卓が、を擦る凄まじい鳴りのような音が斉になりった。の黒スーツの男たちが、訓練された軍隊のように寸分の狂いもなく直の姿勢を取る。
そして次の刹、の背が斉に直角に折れ曲がり、々とがげられた。
誰も息を吸うことすら許されないような、底えのする異様な静寂と緊張が、部の隅々にまで張り詰めていく。
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勢子はその景をにして、目をパチクリと瞬かせた。
何が起きたのか、彼女のでは理解が追いついていなかった。だが、自分の夫が所属する組の男たちが、斉にちがってをげたという事実だけを、都よく解釈した。
勢子は頬にを当て、嬌声をげた。
「やだあ、姐さんだなんて! うちのったら、組員たちにまで私の顔をてるように言ってあったわけ? 気が利くじゃないの!」
勢子は廊にたむろして恐る恐る覗き込んでいる同級たちを振り返り、誇らしげに豊満な胸を反らせた。
「聞いた? これがうちのの組よ!」
同級たちは、部のに充満する異様な空気に呑まれ、誰として声をげられずにいた。
勢子は再び男たちの方へと向き直ると、顎をツンとしゃくり、勝ち誇った声で命じた。
「さあ、この気な継ぎ接ぎ女を、奥でたっぷりがってやって!」
だが。
の男たちのうち、指先つかす者は誰もいなかった。をげたまま、まるで像のように沈黙を保っている。
ただ、座から歩みてきた梶原だけが、鬼気迫る表で顔をげ、股で真っ直ぐに入りへとづいてきた。
勢子はそれを見て、相好を崩した。
「そうそう! あんたからやってやりなさいよ!」
勢子はのにちふさがるようにして、梶原を招きした。