みかん小説
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"恩人の葬儀の裏で、夫は私の実家に値段をつけていた" 第9話

『産簡易査定』『エステート』『★群馬崎実売却益:千百万円』。

夫の喉仏が、トクンときくした。 ネクタイを緩めていた指先が、空でピタリと止まる。

数秒の沈黙の、修はゆっくりと顔をげ、私を見た。

その目には、揺も、恥じらいも、申し訳なさの欠片もなかった。 あるのは、自分のテリトリーを侵されたことに対する、どす黒い苛ちだけだった。

修はネクタイを乱暴に引き抜き、笑を浮かべながら吐き捨てた。

「……勝にの部を漁ったのか? いい趣だな、おい」

「修さん。これ、どういうことか説してくれる?」

私の声は、自分でも驚くほどく、え切っていた。

だが、夫はを鳴らし、靴べらを乱暴にフックに戻すと、私を瞥してこう言い放ったのだ。

「説も何も、見りゃ分かるだろ。どのみちおが相続するゴミみたいな古いだ。それを俺たちの老資に換えて何が悪い? 夫婦のだろ。いちいち『私の』『あなたの』って分ける奴があるかよ」

「……ゴミみたいな古い?」

乾いた声が、自分の喉からこぼれ落ちた。

「そうだろうが」 修は靴を脱ぎ散らかしたまま、がり框に片を乗せて、苛たしげに腕を組んだ。

「築以の造だぞ? 耐震基準も通ってない、リフォームしたってい虫になるだけの粗ゴミだ。それを更にして千百万で売れるって言ってるんだ。

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ありがたいとえよ。俺がわざわざを運んで、産にをげて話をつけてやったんじゃないか」

「をげて……? それなら、このメモは何?」

私はシューズボックスのの資計画表を指差した。 赤ペンで殴りきされた、夫の跡。

『実の解体は相見積もりを取らせず、ナカジマ建設へ発注。キックバック百万確保』

修の眉がピクリとねた。 瞬だけ線が泳ぎ、すぐにき直ったような敵な笑みを浮かべる。

「ビジネスだよ。俺の同期がやってる解体に回せば、マージンを俺たちに還元してくれる。浮いたで、しいマンションのを揃えられるだろ。何が悪いんだ? おみたいな世らずの勤務医には分からないだろうがな、世のそうやって賢くち回るもんなんだよ」

息が止まりそうだった。 胃の腑が、ギリギリと雑巾のように絞られる。

「兄と義姉が遺してくれたよ。私が歳で放りされそうになった、が守ってくれた所よ。それを……ゴミ呼ばわりして、自分の遣い稼ぎの具にするの?」

「おいおい、また始まった」 修は仰にため息をつき、リビングへ向かって同然の取りで歩きした。

「おはいつもそうだ。論ばっかりで、現実の数字がまるで見えてない。いいか、だぞ? 俺がどれだけしてきたか、おは分かってないだろ」

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リビングのソファにドカリと腰をろし、修は井を仰ぎながら吐き捨てるように言った。

「普通の旦ならな、嫁が毎万も万も実に仕送りしてたら、とっくに婚案件だぞ。俺は黙って見逃してやった。おの『恩返し』とやらに付きってやったんだ。その分、俺たちの老資がどれだけ削られたか考えたことがあるのか?」

「仕送りは、私の料から――」

「だから、夫婦のだろうが!」

バン、とテーブルを叩く音がリビングに響き渡った。 修の号が、鼓膜を劈く。

「おが医者で稼いでるからって、全部自分のだとうなよ! 俺がこのの管理をして、おが仕事に専できる環境を作ってきたから今の活があるんだ! のツケを、実ので清算する。当たりだろ! それとも何だ、おはんだ兄貴のいのために、俺との老を捨てる気か?」

んだ兄のい。 のツケ。

言葉のつひとつが、毒の針のように胸に突き刺さる。

言い返す気力すら、急速に失われていくのをじていた。 りではない。 この男とは、言葉を交わす俵そのものが違うのだという、底れない断絶。

「……もういいわ」

「おい、話は終わってないぞ!」

背からの声を無して、私は寝へ戻り、内側から静かに鍵をかけた。

修はしばらくドアので何か喚き散らしていたが、やがて蔵庫を乱暴にける音がして、テレビの音量がリビングを埋め尽くした。

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