"赤字物件と笑う夫、毎月9万の裏口座" 第14話
先ほど内容証郵便にて、ち入りおよび接触の禁止を法に通告した直の犯です。建造物損壊および居侵入の現犯として、厳格な処罰を求めます」
森本弁護士が差しした『登記事項証』と『内容証の控え』を確認した警部補は、面に押さえつけられている直を瞥し、徹に言い放った。
「署までご同願います。パトカーに乗せろ」
「恵理! おい、恵理!」
警官に両脇を抱えられ、引きずられていく直が、私に気づいて叫んだ。 スーツの膝は破れ、額にはがこびりつき、髪は無様に逆っている。
「頼む、取りげてくれ! 会社にられたら俺はクビになるんだ! 借も返せなくなる! 頼むよ恵理、25の恩をいしてくれ!」
恩。 この男のからるその言葉が、これほど滑稽で、これほど吐き気を催すものだとはわなかった。
私は歩もづかず、灯ののでたく見ろした。
「あなたが壊した玄関の修理費、そして今まで横領した賃。すべて弁護士を通じて請求します」
直の顔から、最の表が抜け落ちた。 パトカーのドアが乱暴に閉められ、赤灯のとともに、男は川警察署へと連されていった。
静まり返ったに、たいの夜が吹き抜けた。
割れたガラスの破片と、無残に歪んだ郵便ポスト。 父が遺してくれた切な母の傷跡を見つめながら、私は唇をく噛み締めた。
広告
これで終わりではない。 、すべての膿をし切るための、本当の対峙が始まるのだ。
翌朝、午9。 川警察署での事聴取を終えた森本弁護士から、話が入った。
直は晩留置で取り調べを受け、建造物損壊の事実を認めたという。 初犯であり、妻の実という親族のトラブルであることから、即座の勾留請求は見送られ、元引受のもとへ宅起訴相当として釈放される見込みとなった。
そして、その元引受として警察署に現れたのが、義母の文子だった。
午11。 森本法律事務所の会議に、張り詰めた沈黙が流れていた。
なオーク材のテーブルを挟んで、私と森本弁護士、そして産の専である田島さんが並んで座っている。 向かい側の席のドアがき、案内されて入ってきたつの。
直と、義母の文子だった。
昨夜の面を留めないほどに憔悴し、無精髭の伸びた直は、度も私と目をわせようとせず、背を丸めてパイプ子に沈み込んだ。 その隣で、義母は級なウールのコートを着込み、顔を真っ赤にして私を睨みつけていた。
「恵理さん! あんた、自分の夫を警察に突きすなんて、のがあるの!?」
部に入るなり、義母の甲い切り声が炸裂した。
「直が会社を休む羽目になったのよ! 所のたちもパトカーを見て騒いでるじゃないの! 浦の恥を晒して、あんたどう落としをつけるつもりなのよ!」
広告
テーブルのに置かれた森本弁護士のペンが、カチリとい音をてた。
「静かにしてください、浦文子さん」
森本弁護士のく鋭い声が、義母のヒステリーを真っ向から両断した。
「ここは論をぶつけうではありません。あなたの息子さんが昨夜犯した建造物損壊の現映像、および器物損壊の証拠はすべて警察に保全されています。被害届を取りげるか否かは、本の協議の結果次第です。これ以規則な発言を続けるなら、即座に退席していただき、刑事裁判と民事訴訟の両面で淡々とめることになりますが、よろしいですか?」
義母の喉が、ヒッとさく詰まった。 弁護士という徹な法律の壁をにして、これまで「嫁」という全なサンドバッグを殴り続けてきた老婆のプライドが、音をててたじろぐ。
田島さんが、持参した分いファイルを机の央に滑らせた。
「本題に入りましょう。浦直さん、あなたにお伺いしたいことがほどあります」
田島さんの穏やかな、けれど切の逃げを塞ぐような線が、直を射抜く。
「まず、泉麻さんが所属する産会社から、先ほど私のところへ連絡が入りましたよ」
直の肩が、ビクッとねがった。
「……ま、麻が……?」
「ええ。昨夜、恵理さんが法務局に提した『正登記防止申』、そして泉麻さんの会社宛てに送達された『内容証郵便』。