"赤字物件と笑う夫、毎月9万の裏口座" 第6話
が、息づいている。 ここで、誰かが毎汗を流して活を営んでいる。 父が言っていた通りの景が、そこにあった。
「私、佐野律子と申します」
作業用の丸子を勧められ、佐野さんはカウンターの奥から冊のファイルを取りしてきた。
「信じられません……。私、ここでを始めて、もう丸5になるんですよ?」
「5……」
「ええ。最初はの通りでさくやってたんですけど、ち退きになっちゃって。困っていたに、直さんから声をかけていただいたんです。『妻の実のビルが空いてるから、く貸してあげるよ』って」
佐野さんが差ししてきたファイルをく。 そこには、見覚えのある直の角張った跡で、しっかりと『定期建物賃貸借契約』が作成されていた。
貸主の欄。 そこには私の名ではなく、『浦直』とかれ、夫の個印が堂々と押されていた。
「賃は、おいくらで契約されていますか?」
私の問いに、佐野さんは申し訳なさそうに眉を寄せた。
「相よりしくしていただいて……共益費込みで、9万円です。毎25に、指定された座に度も遅れずに振り込んできました」
、9万円。
ので、急速に計算が弾きされる。 、108万円。 5で、540万円。
540万……?
私の元のスマートフォンに保された、直の収支報告が脳裏をよぎる。
『1階元舗:テナント募集継続(成約見込みなし・維持管理費マイナス18万円)』
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毎、毎、真っ赤な数字を見せつけられ、「おの実のせいで赤字だ」「パート代からし補填しろ」と直に責めてられていた。 義母からは「息子の料にぶらがる寄虫」と罵られ、私は申し訳なさにを縮めて、数百円の特売肉を買いにスーパーをハシゴしていたのだ。
その裏で。 夫は、私のらないところで、540万円ものを懐に入れ続けていた。
「……振込先の座を、見せていただけますか」
声の震えを、どうしても抑えきれなかった。
佐野さんは通帳を取りし、直のページをいて見せてくれた。 そこに印字されていたのは、見慣れたの名ではない。
『埼玉みらい信用庫 川央支』 座名義:『ミウラ ナオキ』
らない。 25、計を預かり、夫の与振込座も管理してきた私が、度も目にしたことのない座だった。
裏座。 夫は完全に、私から隠蔽するために別の融関で座を作り、5にわたって賃料を丸ごと横領していたのだ。
胃の底がひっくり返るような激しい吐き気が込みげてきた。
「あの……奥様、丈夫ですか?」
佐野さんが青ざめた顔で私の背にを添えてくれた。 そのの温もりに、かろうじて識を繋ぎ止める。
「すみません……取り乱してしまって」
「いいえ……そんな。私の方こそ、らなかったとはいえ、こんな……」
佐野さんは胸元を押さえ、唇を噛み締めた。
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そして、悔しそうに言葉を絞りした。
「実はね、奥様。直さんには、ずっと信があったんです」
「信……?」
「の、2階の管が破裂して、うちの井にが染みてきたことがあったんです。切なお客様の預かり物のコートが何着も濡れてしまって……。すぐに直さんに話して修繕をお願いしたんです。でも……」
佐野さんの目が、りに潤んだ。
「『築古の物件に文句を言うな』『嫌ならてけ』って鳴られて。結局、修繕費は円もしてくれませんでした。私が自腹で内装を呼んで、30万円かけて井を張り替えたんです」
りで、奥歯が砕けそうだった。
あのの収支報告を、私ははっきりと覚えている。 『2階配管修繕および1階舗井復旧事:420,000円(特別損失として計)』
直は私にそう報告し、「今はボーナスから補填できないから、おのパート代の定期預を崩せ」と求してきた。 私は父の建物のせいで夫に迷惑をかけたと泣きながら、20万円の定期を解約して直に渡したのだ。
子には1円も払わせず自腹を切らせ、私からは修繕費と称してを巻きげ、その全額を自分の懐に収めていた。
……じゃない。 25、私が信じて尽くしてきた夫は、ただの酷なペテン師だった。
「それだけじゃないんです」
佐野さんは壁の計を見げた。 刻は、午845分を回っていた。
「昨、急に直さんがに来てこう言ったんです。