"「農家の娘」を15分で追い出した義母の誤算" 第15話
会社更の続きを取る余力すらなく、破産管財が入り、事務所の備品もトラックもすべて差し押さえられた。
埼玉のあの階建てのも、元夫の会社が借りげていた社宅扱いだったため、即座に退を命じられた。
元夫と義母は、着の着のままでを追いされ、敷礼のかからない築数の営団へ転がり込んだそうだ。 元夫は自己破産の続きをめながら、雇いの仕分け作業員としていつなぎ、義母は77歳にして、団の清掃のパートを探して回っているという。
宮澤絵里に対する百万円の借も、詐欺での告訴を恐れた元夫が、親族のつてを頼ってをげ回り、どうにか額ずつの分割返済で示談を取り付けたらしい。
あの絢爛豪華な『ロイヤル・ケア・ガーデン』のパンフレットを胸に抱き、勝ち誇ったように私を見ろしていた義母。 「うちの息子にはもっとふさわしいがいる」と叫んでいた、あののれな結末。
を読んだ、私のに湧きがったのは、復讐を遂げたなどではなかった。
ただ、乾いたが吹き抜けたような、静かな虚しさだった。
見栄と嘘で塗り固めた砂のは、が吹けば崩れる。 それだけの、あまりにも当たりの現実が、当たりに起きただけだった。
そんなあるの午、いがけない訪問者があった。
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集荷センターの事務所に、見覚えのある紺のスーツを着た男性が現れたのだ。
「……林、さんですね?」
振り返ると、そこにっていたのは、埼玉の運送会社で創業期からの取引先だった、青果流通企業の配部・佐藤氏だった。
「佐藤部……? どうしてここに?」
驚いて目を丸くする私に、佐藤部はくをげた。
「探しましたよ。森田トランスポートが倒産したと聞いて、群馬の農協に問いわせたら、まさか林さんがここでラインの主任をされているとは」
応接スペースでお茶をすと、佐藤部は苦笑いを浮かべながら、懐から名刺を取りした。
「単刀直入に申しげます。来期から、群馬県産の原野菜を首都圏のスーパーへ直結させる、しいチルド輸送の定期便をちげることになりましてね。その集荷と品質管理の統括を、ぜひ林さんにお願いしたいんです」
「私が……ですか?」
「ええ。森田の会社が傾いたのは、あなたが現の管理からされてからでした。あの社は先ばかりで、トラックの配も遅れがち、荷物の温度管理も杜撰で、現は混乱の極みだった。……私たちが本当に信頼していたのは、無理な運を絶対にさせず、規格のロスを最限に抑えて正確な配を組んでくれていた、あなただったんです」
佐藤部の言葉が、胸の奥くに染み渡っていく。
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『おはただのパートだ』 『いじりしか能がない女だ』
あの親子が26にわたって私に浴びせ続けた言葉の数々が、目ので音をてて砕け散っていくような気がした。
誰も見ていなかったわけではなかった。 私が夜遅くまで事務所に残り、卓を叩き、にまみれた野菜の鮮度を守るために尽くしてきたは、プロフェッショナルの仕事として、正当に評価されていたのだ。
「私でよろしければ、んでお引き受けいたします」
私はをげた。 界がし滲んでいたが、声は凛として、度も揺れなかった。
その来事があった翌週の夕方だった。
集荷センターの仕事を終え、実の台所で夕の支度をしていた、居の古い黒話が甲い音をてて鳴り響いた。
この話の番号をっているのは、姉の族と、農協の数だけのはずだった。
し首を傾げながら、受話器を取り、に当てる。
「はい、林ですが」
『…………織さん?』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、ひどく掠れた、湿り気のある老婆の声だった。 背景から、ガタゴトと響くの通過音と、パチンコの喧騒のようなノイズが混ざりっている。 公衆話からの通話だった。
義母だった。
臓が拍だけねた。 だが、かつてのように胃が締め付けられるような恐怖も、や汗もなかった。
私の脈拍は、驚くほど静かに、定のリズムを刻み続けていた。