"「農家の娘」を15分で追い出した義母の誤算" 第9話
私の座から引きしたおも、会社の経費ではなく、の借入の利払いに消えたとか」
絵里の声は、どこまでも平坦で、酷だった。
「私の弁護士から、本付で会社宛てとご自宅宛てに催告を発送しました。来週曜までに全額の返還が確認できない、詐欺罪での刑事告訴、ならびに与等の仮差押え続きに移します」
「絵里、待ってくれ……! 頼む、話を聞いてくれ!」 夫がいつくばるようにして玄関のタタキへびしてきた。 「悪気配はなかったんだ! 規の融資さえ通れば、すぐに利息をつけて返すつもりだったんだ! 頼むから、告訴だけは……!」
「度と、私のに現れないで」
絵里は伸ばされた夫のを、を翻してたく払いのけた。 そして、玄関の脇にっていた私に、わずかに線を止めた。
値踏みするような線。 けれど、私のに握られたスーツケースと、然とした佇まいを見た瞬、絵里の目にわずかな揺がった。
「……奥様、ですね」
「いいえ」
私は静かに首を横に振った。
「昨の夕方、婚届が受理されました。私はもう、このの妻ではありません」
絵里の息が、喉の奥で詰まった。 自分が騙され、利用され、沈みゆく舟に乗せられていたことを、完全に悟ったのだろう。
「……失礼しました」
絵里はそれ以何も言わず、踵を返してでっていった。
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カツカツとアスファルトを叩くヒールの音だけが、の宅にたく響き、やがて消えた。
残されたのは、タタキに額を擦りつけて咽び泣く夫と、壁にもたれかかってをパクパクと閉させている義母。
「……浩司……うそでしょう……? あのお嬢様が……ただのサラリーマンで……あんた、借までしてたの……?」
「うるさい……! うるさい、うるさい!!」 夫はを拳で殴りつけた。 「全部母さんのせいだ! 母さんが婚届なんてさなきゃ、織の実のを担保に入れて、融資の千万で絵里へのも全部返せてたんだよ!!」
「私のせいにするんじゃないわよ!!」 義母がヒステリックに叫び、に散らばったパンフレットを息子に投げつけた。 「あんたが嘘をついたからでしょうが! 持ちのお嬢様を連れてくるって言ったから、あんな臭い農の嫁を追いしてやったんじゃないの!」
を塞ぎたくなるような、醜悪な罵りい。
私はスーツケースの持ちをしっかりと握り直した。
のを通り抜け、へようと敷居を跨ぐ。
「待ちなさいよ、織さん!!」
背から、義母がいがってくるような声で叫んだ。 スカートの裾を掴もうと、節くれだったが伸びてくる。
私は半歩、を引いてそれを躱した。
「どこへく気なのよ! こんなに、で逃げる気!? あんた、うちの嫁でしょうが!」
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義母の目は血り、唾をばしながら喚いた。 「浩司がこんなに苦しんでるのよ! あんたの実に頼みなさいよ! 群馬のを売り払えば、千万や千万、なんとでもなるでしょうが! 族が困っているに助けないで、何が嫁よ!」
、毎のように浴びせられてきた理尽な命令。 『農のくせに』 『うちのに拾ってもらった分際で』
かつての私なら、罪悪に喉を詰まらせ、何も言い返せずに涙を呑んでいただろう。
だが、今の私のには、さざ波ひとつたなかった。
「族ではありません。昨、あなた自ので終わらせたはずです」
「な……っ!」
「それから、私の実のは、くなった父が額に汗して、にまみれて遺してくれた切な所です。の丈にわない見栄を張り、嘘をねて作った借の穴埋めに差しすようなとは、の質が違います」
「あんた……! なんての利き方を……!」
「度と、私の実に寄らないでください」
私はドアノブを引き寄せ、たいのへとを踏みした。
背で、カチャリとドアが閉まる。 鳴り声も、泣き叫ぶ声も、い鉄の扉に遮られて途絶えた。
見げた埼玉の空は、どこまでも澄み渡り、たく青かった。
それから、嵐のような静けさが続いた。
古い造アパートの畳で、私は雇いの倉庫内軽作業の求を探しながら、淡々と自炊をして過ごした。
夫からの着信は、に件を超えていた。 だが、度もなかった。 義母からの留守番話には、「親孝者」