"「農家の娘」を15分で追い出した義母の誤算" 第8話
私はそれ以、に線を向けることすらしなかった。
階の自へがり、押し入れの奥から自分のスーツケースを引きす。 父の形見のさな箱。 私が独代から使っていた古い文具。 自分が稼いだおで買った、わずかな。
それらをく詰め込み、ジッパーを閉めた。
滞は、わずか分。 階段をり、再び玄関へ向かう。
リビングでは、まだが喚きっていた。 夫はを抱えて唸り声をげ、義母は泣き叫びながら息子の背を叩いている。
私が靴を履き、ドアノブにをかけただった。
ピンポーン。
静寂を引き裂くように、軽やかなチャイムの音が鳴り響いた。
言い争いが、ピタリと止まる。
「……え?」 義母が涙でぐしゃぐしゃになった顔をげ、すがるような表で玄関を見た。 「絵里さん……? 浩司、絵里さんが来てくれたんじゃないの!? やっぱり、お父様にお願いしておを用ててくれたんだわ!」
義母は狂気じみた笑顔を浮かべ、転がるように玄関へとってきた。 夫が「やめろ! けるな!」と叫ぶのも聞かず、鍵をけ、勢いよくドアを引き倒す。
の眩しいのに、の女性がっていた。
仕てのいいベージュのトレンチコートを着て、綺麗な革のバッグを持った、40代半ばの女性。 宮澤絵里だった。
「絵里さん! ああ、絵里さん、待っていたわよ!」
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義母が両を広げて縋り付こうとする。
だが、女性は歩、ややかにを引いた。 その瞳には、親しみなど微もなかった。 見すような、氷の刃のような徹な。
女性はバッグのから、に赤のラインが入った、見覚えのある細い封筒を取りした。
郵便局の『内容証郵便』の控え。
「森田拓也さんはいらっしゃいますか?」
絵里の声は、く、かった。
「先、事業資のて替えとしてお貸しした百万円。期を過ぎても返済が確認できません。本付で、弁護士を通じて括請求の通を発送いたしましたので、ご確認ください」
義母のきが、完全に止まった。
「……は?」
義母の喉から、空気の抜けたような音がた。
広げかけた両腕が、空で自然に固まっている。 線は、宮澤絵里のえ切った瞳と、その指先に握られた内容証の赤いラインをき来していた。
「な、何を言っているの……? 絵里さん、うちの浩司……拓也を助けてくださるんでしょう? お父様の会社から、資を……」
「お父様の会社?」
絵里の唇の端が、嘲笑うようにわずかに歪んだ。
「私の父は、数に定退職して、今は暮らしですけれど。何の会社の話ですか?」
「だ、だって……」 義母の声が擦り、裏返る。 「拓也が……うちの息子が言ったのよ! 港区にビルを何棟も持っている資産のお嬢様だって! 私の老の面倒も、あの千万円の老ホームも、絵里さんのご実がしてくださるって!」
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「……気が悪い」
絵里は吐き捨てるように言い、歩、靴底を鳴らしてろへがった。 その差しには、れみすらなく、ただ理な嫌悪だけが渦巻いていた。
「私がいつ、そんな約束をしましたか? 私はの材サービス会社で営業事務をしている、ただの会社員です。資産の令嬢でもなければ、見ずらずの赤のの老ホーム代を払う義務もありません」
「嘘……嘘よ……!」
義母がを抱え、そのにへたり込んだ。 フローリングに膝が落ちる、い鈍い音。
「じゃあ……じゃあ、あの百万って……」
「先、拓也さんから『末の決済がどうしてもにわない、来週にはの売掛が入るから数だけて替えてくれ』と泣きつかれて、私の個の貯から振り込んだおです」
絵里は線を玄関の奥へと向けた。 そこには、青ざめた顔で壁に張り付き、刻みに震えている夫の姿があった。
「拓也さん。あなた、私には『妻とはとうに破綻していて、すでに婚調だ』とおっしゃいましたよね? 会社も順調で、今期の売は比割増しだと、偽造した試算表まで見せて」
夫の喉仏が、ひくひくと痙攣した。 言も声がない。 脂汗が額から顎へと滴り落ち、首元の歪んだネクタイを濡らしていく。
「昨、あなたの会社の元役員の方から連絡をいただきました。私の共通のです。
……会社はとっくに債務超過で、来週渡りをす寸だそうですね。