"「農家の娘」を15分で追い出した義母の誤算" 第3話
ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ。
画面にる文字は【夫】。
私は湯呑みを置かず、液晶画面の青い発をただややかに見つめていた。 コール音は限界まで鳴り響き、やがてぷつりと途切れる。 だが、3秒も経たないうちに、再び激しい振が始まった。
2回、3回、4回。 画面の向こうにいるの、尋常ではない焦燥が波を通じて伝わってくるようだった。
やがて画面に、『留守番話が1件あります』の通。
私はゆっくりとを伸ばし、スピーカーホンにして再ボタンを押した。
『おい! 織! どういうことだ!』
スピーカーが割れんばかりの、夫の声だった。 張先の福岡の級ホテルにいるはずの男が、完全にを失って喚き散らしている。
『なんで今したんだ! 母さんに渡されたからって、なんで今しちまうんだよ! 曜の続きが終わるまで待てって、あれほど母さんに言っておいただろ! ……おい、お、まさか会社のこと、母さんに何か話したのか!?』
喉を詰まらせたような、鳴にい声。
『今すぐ役所へって取り消してこい! いいか、絶対に取り消すんだ! 俺のを潰す気か!』
プツン、と無質な切断音が響き、畳は再び静まり返った。
私はめかけたお茶を喉へ流し込み、スマートフォンの画面を伏せた。
取り消せるはずがない。 協議婚届は、双方のと適法な署名捺印があれば、窓に受理された瞬に法効力を持つ。
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取り消したいなら、庭裁判所に無効確認の調を申してるしかない。 だが、あの用にサインしたのは、ならぬ夫自だ。
それにしても――。
「会社のことを、母さんに話したのか、ですって?」
声にして呟くと、乾いた笑いが漏れた。
夫は、母親に捨て駒として私を追いさせようとしていた。 だが、その母親が「功を焦って」暴し、夫のてていた計画のタイムリミットよりに私を追いしてしまったのだ。
夫が隠していた会社の真実。 そして、曜に予定されていたという「続き」。
私はバッグの底から、もうひとつの荷物を取りした。 をる直、私の古いタンスの底から引き抜いてきた、冊の黒いバインダーだ。
そのバインダーには、私が過20以にわたって個につけてきた、夫の運送会社の「裏の記録」が綴じられていた。
夫は私が数字に疎い、ただの元・作業員だとい込んでいた。 伝票をからへ流し、言われた通りに請求を封筒に入れるだけのロボットだと見していた。
だが、私は農の娘だ。 規格の野菜をどれだけ加用に回せば赤字を回避できるか。 肥料代の騰に対して、運賃の昇をどこまで荷主に転嫁できるか。 父親がだらけの指で卓を叩く背を見て育った私にとって、数字の性を追うのは呼吸と同じだった。
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バインダーをくと、直半の試算表のコピーと、私が個にき留めていた資繰りメモが並んでいる。
夫の会社は、とっくに債務超過に陥っていた。
原因はだった。 見栄を張って導入した最型の型トラックのリース料。 そして、規事業のちげと称して入りしていた異業種交流会での無謀な費。 何より、数ヶから夫が特定の女性――宮澤絵里という会社員に注ぎ込んでいた、使途の交際費の数々。
会社の座はので、主な取引先への支払いはすでに2ヶ遅延していた。
そして、バインダーの最のページ。 そこには、先週、夫の斎のゴミ箱の奥底から見つけした、枚の類の写しが挟まれていた。
『企業信用保証協会 保証委託申込(兼・個連帯保証承諾)』
申込の欄には、株式会社モリタトランスポート、代表取締役・森田拓也。 そして、連帯保証の欄。 そこには鉛でく、私の名と、そして群馬の実の所がきされていた。
曜に予定されていた続き。 それは、元の方から追加融資を引きすための、最終面談だったのだ。
融資条件はただひとつ。 「代表者の妻による個連帯保証」、および「妻の実が所する産の担保提供の余」。
夫は、私の父が遺してくれた群馬のさな平とを狙っていた。