みかん小説
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"夫のスマホ「あの女は自分から出ていくよ」" 第7話

指先が、たい革の触りを捉える。

私の実印。 印。 印鑑登録カード。 そして、独代に事務員として働いて貯めた定期預の通帳と、くなった両親が残してくれたわずかな遺産の通帳。

無事だった。 あいつらはや用品を乱暴に段ボールに詰めることにで、ここまでは気づかなかったのだ。

それらをリュックの底に滑り込ませ、私は息を切らしながら階へりた。

リビングの隅にある、義母の「」とも呼べる文机。 いつもなら、義母の許なく触ることすら許されなかった所だ。

「嫁の分際で、の物に触るんじゃないよ」 いつもそう言って私を鳴りつけていた義母の机。

引きしにをかける。 番の引きしには、町内会の類や領収が然と並んでいた。 段目、段目とけていく。

段目の奥に、見慣れない茶封筒が押し込まれていた。 引っ張りすと、から枚のプラスチックのカードと、類の束がてきた。

病院の領収。 そして、A4の用に印字された文。

『診療報提供 発依頼(控)』

宛先は、先週私がで駆け込んだ、あの内科クリニックだった。 依頼者の欄にかれていた名に、私の目は釘付けになった。

『川正(患者の夫)』

夫は、私のらないところで、あのクリニックへ連絡を入れていたのだ。 用の余に、夫の乱暴な字でメモが残されていた。

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『院面談希望。妻の度な記憶障害、および精神錯乱の兆候について、診断の作成を依頼。族としての活維持が困難な旨を記載請』

背筋に、氷を押し当てられたような悪寒がった。

夫は、クリニックの医師を抱き込もうとしていた。 「妻は狂っている」という公な診断をに入れ、私を法に無力化しようとしていたのだ。

だが、そのにもう枚、クリニックからの回答がホチキス留めされていた。

『院回答:本の確な同および診察なしに、族の申してのみによる診断の発は。先の診察において認能に異常は認められず、精神疾患の診断をす医学根拠はしない』

医師の、毅然とした拒絶の言葉。

夫の企みは、ここで度頓挫していたのだ。 だから、方針を変えた。 医者が診断をさないなら、常ので私を追い詰め、自ら「私はおかしくなりました」と言わせる作戦に切り替えたのだ。

元がりでガタガタと震える。 私はスマホを取りし、その類を無音カメラで何枚も撮した。

それだけではなかった。

文机の横に置かれたさな製のゴミ箱。 には、シュレッダーにかけるの屑がいくつか捨てられていた。

何気なく線を落とした私の目は、ゴミ箱の底に丸めて捨てられていた、い黄緑の片を捉えた。

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柄の縁取り。 義母が用している、あの付箋だった。

指先を伸ばし、その片を拾いげた。 くしゃくしゃになったを、破れないように慎に広げる。

そこには、義母の細く角ばった字で、こうかれていた。

『正へ 今の気代の督促状、予定通り米びつの裏に隠しておいたわよ。 これでまた、あのが「払ったはずなのに」って怯える顔が見られるわね。 くあの女をして、理さんを呼びましょう。私のの世話も、若いの方がだわ』

……喉の奥から、乾いた空気がヒュッと漏れた。

文字が、滲む。 涙ではない。 あまりの吐き気と、の底れない悪に対する恐怖で、目のが真っ暗になりそうだった。

米びつの裏の督促状。 あれは、義母がわざと隠したのだ。 私を鳴りつけ、「また忘れたのね」「母親失格ね」となじるためだけに、親子で結託して仕組んだ罠。

そして、理。 あの倫相をこのに招き入れ、自分の介護をさせるために。

。 私はこの老婆の腰がたなくなった、の世話まで引き受けた。 便器の掃除をし、体を拭き、好みの付けを覚え、どんな理尽な暴言にも「すみません」とをげてきた。

その介護を、「若い女」に乗り換えるためだけに。 邪魔になった私を、精神異常者に仕てげて捨てようとしていた。

「……ふざけないでよ」

誰もいないリビングに、私の絞りすような声が落ちた。

「ふざけるな……!」

付箋を握りしめた拳が、く張る。

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