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"「妻のヒモになれ」と笑われた夜、専務が頭を下げた" 第6話

机のには、源が入ったままのタブレット。 画面には、無な赤文字で『正解』の表示が点滅していた。

若菜ちゃんは、アルファベットの文字の『b』と『d』の区別すら、まだ覚束ない段階だった。 それなのに、瀬部の主導する営業キャンペーンによって、母親が額な『学先取りハイレベル英語特訓』に申し込んでしまっていたのだ。

画面に流れるスピードの速い文。 理解が追いつかないまま制限が迫り、適当に選択肢をタップしては、ブブーという無質なエラー音が鳴り響く。 その音が鳴るたび、女の体はさくね、怯えたように張った。

「バカなんかじゃないよ、若菜ちゃん」

私は女の隣にしゃがみ込み、タブレットの画面をそっと伏せた。 引きしから、使い古した線の英語ノートと、本の鉛を取りす。

「画面を見るのは、今はおしまい。先と緒に、この『b』の文字を、きくノートにいてみよう。からに、くるっと丸を描くんだ」

若菜ちゃんは涙で濡れた目を瞬かせ、おずおずと鉛を握った。 圧のい、頼りない線。 それでも、自分のでに文字を刻み、声にして発音した瞬、女の張っていた頬が、ほんのしだけ緩んだ。

週に度、私は若菜ちゃんのためだけに、作りのやり直しプリントを用した。 違えた単語を切り貼りし、ヒントをイラストで描き添えた、完全にアナログな冊子。

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会社の規定では、自作教材の配布は原則として禁止されていた。 それでも、目ので自信を失いかけている子どもをにして、規定を盾に放置することなど、私にはどうしてもできなかった。

週、私は若菜ちゃんの母親を教に呼び、面談のを設けた。

「お母様。若菜ちゃんは、決して理解力がいわけではありません。ただ、現受講されているハイレベル講座は、度がすぎて基礎の定着を妨げています。度、基礎徹底クラスへ移しませんか。謝は半分くがりますが、まずはと鉛で『けた』という成功体験を積みねる方が、い目で見て確実に伸びます」

母親は最初、酷く戸惑っていた。 クラスをげることは、娘が落ちこぼれることではないのか――母親の瞳には、そんな焦燥が滲んでいた。 だが、私が渡した若菜ちゃんのノートを見た瞬、母親の表が変わった。

そこには、毎回の授業で若菜ちゃんが自らのでき直した、何個もの正しい英単語が並んでいた。 赤ペンでき込まれた丸と、を追うごとに力くなっていく跡。

「……先。この子、では『英語が怖い』としか言わなくなっていたんです。でも、このノート……こんなに頑張っていたんですね」

母親はノートを胸に抱きしめ、くをげた。

「先を信じます。基礎クラスへの変更をお願いします」

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胸のつかえが、ようやく取れたいだった。 の徒の学習欲を、ギリギリのところで守り抜くことができた。 そう信じていた。

だが、その平穏は、わずかに無残にも打ち砕かれた。

「佐久講師、今すぐ統括へ来なさい」

内線話の向こうで、瀬部の甲い声が気を孕んで震えていた。

統括本部の個に呼びされた私を待っていたのは、机を激しく叩く音だった。

「どういうつもりよ!」

類の束が、私の元に叩きつけられた。 若菜ちゃんのコース変更届だった。

「ハイレベル特訓から、番単価のい基礎クラスへ変更? 額にして万千円の減収よ! なぜ継続を説得しなかったの? なぜアプリの演習量を増やして対応させなかったわけ!?」

「徒の習熟度が、講座のレベルに達していませんでした。あのままでは英語そのものを嫌いになって――」

「顧客の嫌を取って単価をげるのが、講師の仕事だとでもってるの!?」

瀬部はちがり、私の胸元を指差した。 その爪は、鮮血のような赤に塗られていた。

「埼玉エリアの今期の売目標、どれだけカツカツかっているでしょ! あなたの勝な『お気持ち指導』のせいで、事業部全体の予算達成が危うくなるのよ! だいたい、親がを払うと言っているものを、なぜわざわざ引き留めるのよ。

詐欺師じゃあるまいし!」

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