"「あの担当者はどこだ」社長の一言に凍る年下上司" 第17話
そして、ゆっくりと私の方へと向き直った。
その顔には、職だけが見せる、最の笑みが浮かんでいた。
「……見事だ、佐藤君。あんたのの勝ちだ」
翌週の曜。 本社ビルの会議には、異様な緊張が漂っていた。
座には、宮本社がで腰をろしている。 その向かいには、が社の代表取締役専務、そして青ざめた顔の島本部が並んでいた。
田辺の姿は、そこにはなかった。
社内監査と品質保証部の同調査により、田辺による納期の改ざん、注先への品質偽装、さらには過の案件における複数の虚偽報告がのに晒されたのだ。 田辺は課の役職を解任され、現は自宅待命令。 懲戒解雇こそ免れたものの、勤止と格処分がり、今は営業の現から完全にされ、コンプライアンスの再研修を受けることが決定していた。
島本部が、々とをげた。
「宮本社……この度は、弊社の元課が、御社に対してな背信為を働きましたこと、よりお詫び申しげます。本部である私の監督届であり、いかなる処分も受ける所で——」
「島さん」
宮本社は徹な声で、その言葉を遮った。
「あんたの謝罪を聞きに来たんじゃない」
宮本社は内ポケットから万を取りすと、テーブルのに置かれていた分い契約に、迷うことなく自署をらせた。
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『圧プレス専用特殊ピストンユニット 継続供基本契約』
島本部と専務が、顔を見わせた。
「み、宮本社……これは……?」
「契約だ。ただし、回の田辺とかいう男がしてきたような、無謀な括納入ではない。佐藤君が現と練りげた、のキャパシティに見った完全な段階納入計画に基づくものだ」
宮本社は万のキャップをカチリと閉め、顔をげた。 その鋭い線が、島本部を射抜く。
「勘違いするなよ、島さん。私がこの契約に判を捺したのは、あんたの会社の板に惚れたからじゃない。ましてや、あんたが作った綺麗な営業資料に納得したからでもない」
宮本社は、部の末席に座っていた私を真っ直ぐに指差した。
「そこにいる佐藤君が、現で守り続けてきた『技術への誠実さ』に対して判を捺したんだ。……現を舐めるな。佐藤君のようなを粗末に扱う会社とは、私は度と仕事をせん」
専務が慌てて々とをげ、島本部は顔から滝のような脂汗を流しながら、ただ「申し訳ありません」と繰り返すしかなかった。
契約の調印が終わり、宮本社が席をった。 見送りのためエレベーターホールまで並んで歩く際、宮本社は私と並び、声で言った。
「いい顔になったな、佐藤君」
「宮本専務のおかげです」
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「バカ言え。礼を言うのはこっちだ。……また、へ来い。たまには美い酒でももう」
エレベーターの扉が閉まる瞬、宮本社は悪戯っぽく笑って、軽く片をげた。 それは、発注者と請けという関係を超えた、の荒波を共にき抜いてきた技術同士の、確かな敬の証だった。
そのの夕方。 役員から戻った島本部に、私は別へと呼びされた。
応接のソファにく沈み込んだ島は、週で歳も老け込んだように見えた。 かつて私を窓際へ追いやったの、あの酷なエリートの面はどこにもない。
「……佐藤」
島は力なく顔をげた。
「専務とも話した。……おを、営業第課の課に戻す。田辺の任だ。おの処遇を見直すよう、役員会にも私からく推薦した。与も役職当も、以の準以に戻す」
島は、柄を譲るような、どこか願するような目で私を見た。
だが、私のは驚くほど凪いでいた。
もし、窓際に追いやられた直なら、私は泣いてその辞令を受け取っていただろう。 だが、今の私にとって、そんな社内の肩きなど、何の価値も持たなくなっていた。
「本部。お言葉ですが、課のポストはお受けできません」
「な……何故だ!? おが現復帰するための、これ以ない筋だぞ!」
「私はもう、誰かの作った売目標の数字を追いかけ、部を急かし、社内政治にを悩ませるような仕事をする気はありません」