"「あの担当者はどこだ」社長の一言に凍る年下上司" 第9話
その瞬だった。
ビビビビッ、ビビビビッ、ビビビビッ!
静まり返ったフロアに、けたたましい子音が鳴り響いた。
島の内ポケットからだった。 社用のスマートフォンが、着信ではなく、緊急を告げるアラート音を激しく鳴らしている。
島が審そうに眉をひそめ、ポケットから端末を取りした。 画面を親指でスライドさせた瞬、島のがピタリと止まった。
その顔から、瞬くにが失われていく。
「な……んだと……?」
島の指が、目に見えてカタカタと震え始めた。
画面に表示されているのは、役員全員に斉送信された、宮本精密からの公式な子内容証通——。
そこには、赤字で調された烈な件名が躍っていた。
『貴社営業第課・田辺健太氏による虚偽仕様提案および納期詐称に対する厳抗議、ならびに今の取引止に関する通告』
「な……んだと……?」
島本部の唇から、掠れた空気の音が漏れた。
エレベーターの扉が静かにき、誰も乗らないまま再び閉まる。 鏡のように磨かれたステンレスの扉に、血の気を失って気になった島の顔が、歪んで映っていた。
指先が震え、スマートフォンの画面が刻みに揺れている。
役員全員への斉同報。 代表取締役、専務取締役、常務会、さらには社監査役のアドレスまでが、酷なまでに然と並んでいた。
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そこへ、フロアの奥から音がづいてきた。 自分の破滅がそこに届いていることすららず、田辺がタブレットを脇に抱え、取り巻きの若を引き連れて歩いてくる。
「本部、おはようございます! あの、昨の宮本精密の件ですが、先ほど修正版のプレゼン資料をクラウドにげましてですね。し先方の社がへそを曲げていますが、私がもう度単独で乗り込んで、会ルートから揺さぶりをかければ——」
「田辺」
島が、をうような声で言った。
「……え?」
「これを見ろ」
突きつけられた画面を覗き込んだ瞬、田辺の顔から、あの貼り付いたような笑いが完全に消え失せた。
「ひっ……!?」
喉の奥で、い鳴が引きちぎられる。
「と、取引止……? ぎょ、業務妨害および……詐称……? な、何ですかこれ! 何かの違いですよ! たかが度の商談のき違いで、内容証の子通告なんて……!」
「たかが、だと……?」
島が田辺の胸ぐらを掴まんばかりに詰め寄った。 普段の静沈着なエリート本部の仮面が、瞬で剥がれ落ちている。
「宛先を見ろ! 社だぞ! 監査役まで入ってるんだぞ! 宮本精密はな、うちの作械向け特殊部品の、国内トップシェア顧客だ! ここを切られたら、今期の営業利益の割が吹きぶ! 俺の首だけじゃ済まないんだよ!」
「で、ですが本部! これは現の……のせいです! 私はただ、会社の売のために最善を尽くしただけで……それに、昨だって佐藤がろで妙な挨拶をして雰囲気を壊したからで……!」
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見苦しいまでの擦りつけ。 だが、その言葉を聞いた島の濁った線が、ハッと弾かれたように、私の顔へと向けられた。
その瞳に浮かんだのは、りではなかった。 溺れる者が、目のに流れてきた藁にすがりつくような、浅ましいまでの懇願だった。
島は私の腕を掴んだ。 指が肉にい込むほどの、異様な力だった。
「……佐藤」
声が裏返っている。
「お……宮本社と、古い付きいなんだろう? さっき言ってたな、に緒に仕事をしたと」
私は答えず、島の充血した目を見つめ返した。
「け」
島は唾をばしながら、私の肩を揺さぶった。
「今すぐ宮本精密へって、座でも何でもしてこい! 『若が勝に勇みを踏んだ、会社の総ではない』と説しろ! おなら話を聞いてくれるはずだ! をげて、この通告を取りげさせてくれ!」
胃の底から、苦いものが込みげてきた。
柄はすべて若きエリートのもの。 数字が取れれば「古いは用済み」と切り捨て、ひとたびがつけば、かつて切り捨てたロートルを沼に放り込んで盾にする。
、この会社で何度も見せられてきた、醜悪な組織の勝そのものだった。
私は、腕に絡みつく島の指を、静かに、しかし力く払いのけた。
「お断りします」
「……何?」
島が目を剥いた。 田辺が信じられないものを見るような顔で私を凝する。