"朝食が5分遅れて平手打ち、夫は「母さんを怒らせるな」" 第9話
義母が息を呑み、隣の夫をギョッとした目で見つめた。 夫は絶望に染まった顔で、を抱えて縮こまっている。
私は誰にもをげず、背筋を真っ直ぐに伸ばして、自ドアの向こうへと歩きした。
夜のたい空気が、よく肌を撫でる。 胸の奥に広がっていた苦しい澱が、音をてて消えっていくようだった。
だが、あの族の獄は、まだ始まったばかりだった。
曜の朝、7。
スマートフォンのアラームが鳴るに、私は自然と目を覚ました。
里奈の部のカーテンをけると、澄んだの青空が広がっていた。 静かだった。 誰かの嫌を伺う必もなければ、6きっかりに湯気をてて朝を並べる必もない。
コンビニで買った温かいドリップコーヒーをに含む。 それだけで、胃の奥にたまっていた鉛のようなみが、しだけ溶けていく気がした。
だが、私のスマートフォンは、朝の通勤ラッシュが始まるから狂ったように震え続けていた。
画面に点滅する、夫の名。 すでに着信は14件。
午715分。 今度はLINEの通が連打された。
『おい、どこにいる』 『頼むから話にてくれ』 『母さんの膝が本格にかなくなって、今朝から激痛で泣き叫んでるんだよ』 『俺の、軽だからがくて母さんを乗せられないんだ。お、実のフィット運転できるだろ。
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今すぐ来てくれ』
え切った指先で、画面を見つめる。
……は? 何を言っているの?
実のフィット? あれは義父のだ。義父が自分で運転して、自分の妻を病院に連れてけばいいだけの話じゃないのか。
続いて、けないメッセージが届いた。
『親父は「俺は腰が痛いから病院の付き添いなんて無理だ」って部に閉じこもっちまったんだよ!』 『母さんは「浩司の運転は荒いから嫌だ、由美さんに運転させろ」って喚いてるし!』 『総病院の予約、朝8半なんだよ! 遅れたら午の枠が消えるんだぞ!』
喉の奥から、乾いた息が漏れた。
自分が休を取って母親を病院に連れてくと決まった途端、これだ。 これまで義母のヒステリーをすべて私に押し付け、自分は「優しい息子」のポジションに座り込んでいた夫。 そして、妻がどれだけ苦しんでいても「事は女の仕事だ」と決め込み、指本かそうとしない義父。
いざ代わりがいなくなった瞬、この親子は自分たちだけで病院にくことすらできないのだ。
私は画面をタップし、く打ち込んだ。
『私は今、通常勤務です。タクシーを呼んでください。介護タクシーの配が必なら、域の包括支援センターに相談してください』
送信して、即座に夫の着信をブロックした。
こんな茶番に、私の貴な平の朝を1秒たりとも使ってたまるか。
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私はスーツのジャケットを羽織り、駅へ向かった。
だが、あの族の崩壊劇は、私の像をはるかに超えるスピードでんでいた。
そのの昼休み。 社でうどんをべていると、義姉の麻さんからメッセージが届いた。
『由美ちゃん、丈夫? さっき浩司から泣きべその話がかかってきたわよ』
麻さんによると、病院での惨状は凄まじいものだったらしい。
結局、夫はタクシー代を惜しみ、痛がる義母を無理やり自分のの助席に押し込んで総病院へ向かった。 だが、予約を30分過ぎて到着したため、受付で散々待たされる羽目になったという。
『あの病院の形科、予約してても平気で2待つじゃない? 母さん、待のいベンチで「痛い、痛い」って騒ぎして、周りの患者さんからい目で見られたらしいのよ。で、そのストレスを全部浩司にぶつけたんですって』
「おの運転がだから膝に響いた」 「のが当たる席に座らせるなんて、親孝者」 「由美さんなら、もっと気の利いたクッションを持ってきてくれたはずよ」
待に響き渡る声で罵倒され、夫は真っ赤な顔をしてさくなっていたそうだ。
『浩司、まれて初めて母親の通院に付き添ったのよ。診察への誘導、レントゲンへの子の移、精算の蛇の列、院処方の薬局での待ち……全部で5かかったらしいわ。
帰りのので、母さんと浩司、取っ組みい寸の喧嘩になったって』