みかん小説
本棚

"朝食が5分遅れて平手打ち、夫は「母さんを怒らせるな」" 第2話

……約束? 誰が。 誰の面倒を?

「……何の話?」

私が睨みつけると、夫は瞬だけ言葉を詰まらせた。 しかし、すぐにき直ったような表で舌打ちをした。

「母さんは膝が痛いんだよ。だから、おが会社を休んででも病院に連れてったり、飯作ったりするのが筋だろ! 俺がそう段取り組んだんだから、勝なことするな!」

私は力任せに、夫のを振り払った。

「私がいつ、そんなこと引き受けたの?」

返事は待たなかった。 ドアを押しけ、初の湿った朝の空気のへを踏みす。

背から「由美! おい! 戻れって!」と鳴る夫の声と、 「放っておきなさい浩司! そんな気な女、痛い目を見ないとわからないのよ!」という義母の切り声が追いかけてきた。

鉄の扉を乱暴に閉め、駅へ向かって歩きす。 アスファルトを叩くキャスターの音だけが、朝の宅に響いていた。

「由美、ちょっとそれ、やした方がいい」

氷嚢を差ししてくれたのは、同期の里奈だった。

会社くにある里奈のワンルームマンション。 急な連絡にもかかわらず、里奈はく私を部に迎え入れてくれた。 鏡を見ると、の頬がうっすらと赤く腫れ、指の跡が浮きている。

「……信じられない。入籍の翌に義母からビンタ? しかも旦が『謝れ』って?」

里奈は淹れてくれた茶を置き、憤りを隠せない様子で私の顔を覗き込んだ。

広告

「あり得ない。完全なDVじゃない。警察く? 診断取った方がいいよ」

「……ありがとう。でも、まだが追いついてなくて」

頬に当てた氷のたさが、じんじんと痛みを麻痺させていく。

計は午9を回っていた。 今は曜。勤めている医療器メーカーは休みだ。 本来なら、来週の引っ越しに向けて、夫と居のカーテンやのサイズを測りにくはずのだった。

スマートフォンの画面が、狂ったように点滅を繰り返している。

通欄を埋め尽くすのは、夫からのLINEだった。

『どこにいるんだ』 『いつまでくだらない張ってんだよ』 『母さんも、言い過ぎたって言ってる。おが謝れば許してくれるから』 『とりあえず今に戻れ。曜の母さんの通院、おがすことになってるんだからな』

スクロールする指が止まる。

……曜の、通院?

私は震える指で、メッセージを打ち返した。

『曜は平です。私も普通に仕事があります』

送信して、数秒も経たないうちに既読がついた。

『休取れよ。おの会社、事務職で休みやすいだろ』 『母さんの膝、きい病院で精密検査なんだよ。俺は営業で回りがあるから無理。おが付き添うのが番スムーズだろ』 『男の嫁なんだから、それくらい当然だろ。族になったんだぞ』

画面を見つめたまま、喉の奥から乾いた笑いが漏れそうになった。

広告

休暇を、なんだとっているのだろう。 私は埼玉の医療器メーカーで、受発注や庫管理の基幹業務を任されている。末初を控えた平に、婚々、事申請もなしに休めるわけがない。 そもそも、なぜ当たりのように「妻が休む」提で話がんでいるのか。

画面が切り替わり、着信をらせるバイブレーションが鳴り響いた。 画面に表示された名は、「浩司」ではない。

『義母』

背筋にがる。 里奈が配そうに私を見る。私はを決して、通話ボタンをスワイプし、スピーカーに切り替えた。

「もしもし、由美さん!?」

をつんざくような甲い声が、静かな部に響き渡った。

「あなた、体どういう教育を受けてきたの? 朝ごはんを遅れてしておいて、注されたら逆ギレして? 親がいないからって、甘えるのもいい加減にしなさいよ!」

受話器の向こうから、ヒステリックな息遣いが伝わってくる。

「……お義母さん。私は、をげられたことに対して納得がいっていません」

努めて静に、声を震わせないよう言葉を絞りす。

「それに、曜の通院の件ですが、私は仕事がありますので休は取れません。浩司さんかお義父さんとご相談なさってください」

瞬の沈黙。 次の瞬、義母は嘲笑うような声をげた。

「はあ? 何言ってるの? 浩司から聞いてないわけ? 浩司がね、『由美に全部任せるから母さんは何もしなくていい』って、結婚するから言ってくれたのよ!」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: