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"朝食を捨てた義母に「二度と台所には立ちません」" 第14話

に膝をつく。 たい畳ので、泣きじゃくる義母の、赤く腫れがったを、両で包み込んだ。

「……っ、触らないで……!」

義母がを引き抜こうとする。 私は力を込め、そのをさなかった。 え切った、骨と皮ばかりの、けれど族の命を繋いできたい。

「お義母さん」

私の声は、静かだった。 けれど、張り詰めた部の隅々まで、はっきりと通るさを持っていた。

義母が涙に濡れた顔をげ、私を睨みつけようとした。 その濁った瞳を、私は正面から見つめ返した。

「料理ができるから、修平さんのお母さんなんですか?」

義母の唇が、さく震えた。

「毎、倒れそうになりながら鍋を振らないと、お義父さんの妻でいられないんですか?」

「……何よ……あんたに何が分かるのよ……」

「分かりませんよ」

私は首を横に振った。

「、専業主婦としてこのを支え続けてきたあなたの孤独も、プライドも、私には全部は分かりません。……でもね、お義母さん」

私は義母の荒れたのひらを、く握り直した。

「たとえ、あなたが包丁を本も握らなくても。お茶を杯も淹れなくても。親戚のに仕しの弁当が並んだとしても」

呼吸、置いた。 の底からの言葉を、文字ずつ刻みつけるように。

「あなたはこののです。誰にも、あなたの居所を奪うことなんてできません」

義母の瞳が、見かれた。

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呼吸が止まったかのように、義母は微だにしなくなった。 涙が、頬のい皺を伝って、私のの甲にポタポタと落ちる。

。 夫からも、息子からも、親戚からも、誰として言ってくれなかった言葉。

「飯がうまい」「気が利く」「よく尽くす」という条件付きの承認ではなく。 労働の対価としての居所ではなく。

ただ、きているだけで、そこにいていいのだという肯定。

義母のから、ヒュウ、と細い呼気が漏れた。 のひらから力が抜け、私の指のに、そのみが預けられた。

「……嘘よ」

かすれた、今にも消えそうな声だった。

「そんなの……綺麗事よ……。親戚のみんなが……何て言うか……」

「言わせたい奴には、言わせておけばいいんです」

ろから、い、けれど確かな声が響いた。

振り返ると、奥のの襖のから、義父の正志がっていた。 いつもの横柄な態度は消え失せ、痛々しいほどさく肩を丸め、妻の崩れ落ちた姿をじっと見つめていた。

「千代……」

正志が歩、リビングへを踏み入れた。 その取りはく、けれど逃げそうとはしていなかった。

「すまなかった。……俺が、おをそこまで追い詰めてたんだな」

義母は顔をげようとしなかった。 ただ、私のので、子供のようにさく丸まり、声を殺して泣き続けた。

修平が、そっと母親の背にを置いた。 綾子が、散らばった湯呑みの破片を、静かに拾い集め始めた。

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の夜の気が、窓のから音もなく忍び寄っていた。

私は、義母のを温めるように握り続けた。 婚初の朝、私の朝をゴミ箱に捨てたあの。 憎くて、悔しくて、絶対に許せないとっていたはずのが、今はただ、ひどくたく、しかった。

、親戚が集まる還暦祝いの幕ががる。

逃げのない親族という名の戦で、この族がの呪縛を解くことができるのか。 それとも、再び世体という名の沼に呑み込まれていくのか。

答えはまだ、誰ののにもなかった。

ただ、元灯のかりの、義母の乱れた髪混じりのが、私の膝のすぐそばで、静かにさく揺れていた。

翌朝の空は、ひとつなく澄み渡っていた。

の終わり。 所沢の宅に、乾いたたいが吹き抜けていく。

朝。 仕し割烹の軽トラックが、田ののにまった。 運転席からりてきた若い配達員が、保箱に収められた祝い膳の箱を、玄関へと次々に運び込んでくる。

かつお節を煮詰めた濃い醤油の匂いは、どこにも漂っていなかった。 換気扇の唸り声も、鍋を叩きつけるような属音もない。 いつもなら戦と化しているはずの台所は、え切った静けさに包まれていた。

廊の奥から、擦れの音が聞こえてきた。

振り返ると、義母がっていた。

落ち着いたの留袖。 襟元をきっちりとわせ、帯はしめに結ばれている。

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