"朝食を捨てた義母に「二度と台所には立ちません」" 第5話
聞がガサリと音をてる。 元灯のので、義母の瞳が恐怖で見かれていた。
「……誰よ!」
掠れた声がんできた。
私は観して、引き戸を静かにけた。
「……私です。喉が渇いて」
義母の顔から、さっと血の気が引いていくのが分かった。 隠した聞の端から、おにぎりの黒い苔がわずかに覗いている。
義母はそれを隠そうと、のひらで聞のからく押さえつけた。 おにぎりが潰れる、ぐにゃりとした触が、こちらにまで伝わってくるようだった。
「あんた……こんなに、何なのよ」
声を取り繕おうとしているが、震えが隠せていない。
「おを杯、もらいに来ただけです」
私は蔵庫へ向かい、麦茶のポットを取りした。 グラスに注ぐ。 トクトクという音だけが、息の詰まるような台所に響いた。
義母を問い詰めることはしなかった。 「何でおにぎりなんてべてるんですか」と聞けば、このはプライドの限界を迎えて爆発するだろう。
グラスの麦茶を気にみ干し、息を吐いた。
「……お義母さんも、お茶、いかがですか」
義母はビクッと体を直させた。 そして、忌々しそうに顔を背けた。
「いらないわよ。……ただ、し、腹が空いただけ。あんたに詮索される筋いはないわ」
「そうですか。……おやすみなさい」
私はグラスを洗い、切りカゴに伏せた。
台所をる直、もう度だけ振り返った。
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元灯の暗いの、義母は聞ののおにぎりを見つめたまま、微だにせず座り込んでいた。
その背は、の主婦のの主などではなく、檻のに閉じ込められた囚のように見えた。
翌朝、曜の朝。
私は勤、収集所に持っていくための燃ゴミの袋をまとめるため、勝のゴミ箱をけた。
所沢の指定ゴミ袋はサイズで、半透の黄だ。 昨夜のゴミやティッシュが詰め込まれている。
袋のを縛ろうとした、底の方に、くていの切れ端がいくつも張り付いているのが見えた。
袋をしたで、ゴミ袋の側面のゴミをし避けた。
レシートだった。 枚ではない。 細く丸められ、ギュッと握り潰された触のある片が、、枚。
私はそのうちの枚を指先でつまみげ、広げた。
見慣れたコンビニのロゴ。 舗名は、所沢駅からの帰りにあるローソンだった。
付は、の夜。 印字されたは――午分。
『紀州梅おにぎり 138円』 『ほうじ茶 600ml 129円』
もう枚を広げる。 今度はファミリーマートのレシート。 の付。は午分。
『昆布おにぎり 128円』 『カップしじみ汁 140円』
さらに、もう枚。 昨夜のものだ。午分。 セブンイレブン。
『巻おにぎり ツナマヨネーズ 151円』
臓が、嫌な音をててねた。
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毎だ。 この数だけではない。 義母は毎晩、族全員が寝静まった夜からのに、わざわざ着を羽織り、徒歩分のコンビニまで歩いてっていたのだ。
そして、たった個のおにぎりを買い、暗い台所で、隠れるようにしてべていた。
「美里さん、何をしてるの」
背から、氷のようにたい声がってきた。
振り返ると、義母が勝の敷居のところにっていた。 用の化粧を完璧に施し、髪も綺麗にセットされている。 けれど、目のには隠しきれない濃い隈が落ちていた。
義母の線が、私の指先にある丸められたレシートに落ちた。
空気が、カチリと凍りついた。
義母の喉仏が、さくした。 瞳のに、剥きしの敵と、それを覆い隠そうとする激しい焦燥が渦巻いている。
私は何も言わず、レシートをゴミ袋の奥くに押し戻した。 そして、袋の結び目を固く縛りげた。
「……ゴミしです。ってまいります」
ちがり、義母の横を通り抜けようとした。
その腕を、義母のが掴んだ。
骨張った、節くれったたい指先。 のからでも、その指が刻みに震えているのが分かった。
「……来週の曜」
義母が、押し殺したような声で言った。
「お父さんの、歳の還暦祝いよ」
私はを止め、義母を見た。
「親戚を、呼ぶわ。親戚を集めて、こので盛にお祝い膳をすの。
仕しなんて頼まない。全部、私がで料理を振るうわ」
「……分を、おで?」