"朝食を捨てた義母に「二度と台所には立ちません」" 第2話
「お義母さん」
線をまっすぐに義母の顔へ据える。 義母は瞬だけ、怯んだように瞳を揺らしたが、すぐに顎を突きして睨み返してきた。
「何よ。言い訳なら聞かないわよ」
「いいえ。よく分かりました」
声が驚くほど平坦にたことに、自分自で驚いていた。
「お義母さんのおにわないものを無理におしするのは、私の徳の致すところです。ですから、からの朝は、どうぞご自分でご用なさってください。お義父さんと修平さんの分も、すべて」
「は……?」
「このヶ、ゴミしや呂掃除、お義父さんの通院の付き添いなど、言われた事は責任を持って務めます。ですが、台所には度とちません。私の作ったものをゴミ箱へ捨てる権利は、誰にもありませんから」
「ちょっと待てよ美里!」
修平が慌ててちがり、子の脚がを甲く擦った。
「母さんはし言い過ぎただけだろ? 初からそんな固になることないじゃないか。飯の支度もしないで同居する気かよ!」
「ええ。しません」
私は修平の目をたく見つめ返した。
「朝を作る労働をゴミ箱に捨てられたが、も同じように笑ってフライパンを握る義務が、こののどこにあるの?」
義母の顔が、りで赤く染まっていった。 唇をわなわなと震わせ、指先で私を指す。
「な、何なのよその態度は! これだから最の女は……し苦労をさせられただけで、すぐに被害者面して! 修平、あんた本当にこんな女で良かったの!?」
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「お義母さん」
私は鞄をに取り、玄関へ向かって歩きした。
「お義父さんの血圧の薬、リビングの棚のに置いてあります。汁のがいとおっしゃいましたが、減塩指導のパンフレットにかれていた塩分濃度に忠実にわせたものです。……あとは、ご自由にどうぞ」
背で修平が何かを叫び、義母が甲い声で罵声を浴びせてくるのが聞こえた。 私は度も振り返らずに、い引き戸をけてにた。
の所沢の朝は、痛いほどえていた。
目の朝、私は半に起きた。
普段通りに支度をえ、スーツに袖を通す。 物流会社のデスクワークは、定が半だ。 をるのは過ぎでいい。
階の寝から階段をりると、階の空気は昨とは打って変わって、淀んだ苛ちに満ちていた。
ガチャガチャと、乱暴に鍋を叩きつけるような音が台所から響いている。 煙の匂い。 油の酸化した、すえたような臭気が廊にまで漂っていた。
「おい、千代! 俺のいつもの靴はどこだ!」
奥のから、義父の正志の嫌な鳴り声がぶ。
「今探してますから待っててください! 修平、あんたもボーッとしてないで聞取ってきなさいよ!」
「俺、今いって言ったじゃん! 弁当は? 弁当できてないの!?」
「今作ってるわよ! 凍の唐揚げチンしてるんだから、ちょっとくらい待ちちなさい!」
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号と鳴が入り乱れる台所の入りを、私は無言で通り過ぎた。
流し台のには、昨の紺のカーディガンを着たままの義母がっていた。 髪は乱れ、れ毛が額に張り付いている。 フライパンのでは、で急激にせられたウインナーが皮を破り、黒焦げの脂をパチパチとび散らせていた。
「あ、美里……」
ダイニングテーブルでネクタイを締め損ねていた修平が、私を見て縋るような目を向けた。
「お、本当に何もしないつもりか? 見ろよ、朝からめちゃくちゃだぞ。おがさっさと飯作ってくれれば、こんなことにならなかっ……」
「修平さん」
私はを止め、ややかに夫を見ろした。
「昨、申しげましたよね。私は台所にはちません」
「おなぁ……! 親父は病みがりなんだぞ!? 族が困ってるのに、自分のを通すのがのやることかよ!」
「のやること、ですか」
私はさく息を漏らした。
「歳にもなって、自分の靴の所も分からず、母親に鳴り散らして弁当を請るのが、あなたの言う『』なんですか?」
「なっ……」
修平の顔が真っ赤に沸騰した。 言い返そうとをパクパクとかすが、適切な言葉がてこないらしい。
その、フライパンのを止めた義母が、鬼のような形相で振り返った。
「美里さん! あんた、よくもそんなが利けたものね! このはね、私が守ってきたの! あんたみたいなが入ってきて、族の輪を乱すんじゃないわよ!」