みかん小説
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"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第14話

たい現実の壁を、枚ずつ積みげていく。 に訴えれば折れるとっていた母親の表から、徐々に絶望のが濃くなっていくのが分かった。

「ただ」 私は呼吸置いた。 「あなたが本当に活に困っていて、で役所の窓にくのが怖いなら……最初の申請の付き添いだけなら、緒にってもいい」

母親が、濡れた目で私を見た。

「おはさない。同居もしない。でも、のとして、政の続きを踏む伝いならする。それが、私ができる最初で最の譲歩です」

母親は、テーブルののメモを見つめたまま、かなくなった。 をしてメモを掴むことも、払いのけることもできず、たださく丸まった背を震わせていた。

「返事は、今すぐじゃなくていいから」

私は伝票をに取った。 自分のんだアイスティーの代だけをテーブルに置く。

ちがり、コートを羽織った。 背に向けられた母親の線は、もう私を縛り付ける力を失っていた。

「さようなら」

それだけ言って、私は振り返らずにレジへ向かった。 自ドアをると、夜のたい空気が肺の奥まで入り込んできた。 取りは驚くほど軽かった。 、私の背に張り付いていた鉛のようなが、跡形もなく消えっていた。

その夜から、親族のグループトークは完全に沈黙した。

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祖母が法事の席で突きつけた、分の領収の束。 あれ以来、誰として「親孝」だの「世体」だのをにする親戚はいなくなった。 ので徳を振りかざしていたたちは、自分にのがりかかると分かった瞬、綺麗さっぱり潮が引くようにっていったのだ。

母親からの連絡も、途絶えた。 あのファミレスでメモを渡したきり、話もメッセージも来なくなった。 私は相変わらず、埼玉の祖母のから京の会社へ通い、平穏な常を取り戻していた。

変化があったのは、それから週ほど経った、曜の夜だった。

残業を終えてに揺られている、ポケットののスマートフォンがく震えた。 画面をくと、母親からのメッセージだった。

またの無か、あるいはみ言か。 構えながらトーク画面をいた。

そこにかれていたのは、予もしなかったい文だった。

『今、役所の窓にってきました。自支援の担当のについて、来から清掃のパートが決まりそうです。でけました』

目を見張った。 あの見栄っ張りで、世体ばかり気にしていた母親が、自分で福祉の窓にを運んだのだ。

メッセージには、続きがあった。

『音、さい頃、何が好きだったっけ。 昔のこと、いすと、音が何が好きだったのか、何ついせなくて。

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それだけ、聞きたかったの』

の揺れにわせて、画面の文字が滲んだ。 おの求でもない。 「お母さん」と呼べというでもない。 遅れの、あまりにも器用で、惨めな問いかけ。

私はスマートフォンのキーボードを見つめた。 胸の奥に、チクリとした痛みがる。 許したわけじゃない。 の空が、これで埋まるわけでもない。 失われたは度と戻らないし、私はこのを「お母さん」と呼ぶことは、この先もおそらくないだろう。

けれど。

私はの窓に映る自分の顔を見つめながら、指先をかした。

『オムライス。卵が固いやつ』

送信ボタンを押す。 すぐに既読がついた。 返信は来なかった。 それで分だった。 私たちには、このくらいの、お互いに踏み込まない距がちょうどいいのだ。

それからヶが過ぎ、季節はになっていた。

会社の昇があり、私の活はしだけ定した。 母親とは、に度だけ、確認のようないメッセージをやり取りする関係が続いていた。 母親は紹介されたアパートで暮らしを続け、清掃の仕事を休まずに通っているらしかった。 度だけ、駅のチェーンの定で昼をべた。 母親は私の仕事の話を、分からないなりに黙って相槌を打ちながら聞いていた。 料の額を聞かれることは、もう度となかった。

をる、母親はし寂しそうに「また、ご飯ける?」と聞いてきた。 私は「気が向いたらね」

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