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"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第11話

この記録をすべて、裁判官のにしてやりますから」

誰も、何も言えなかった。 「親孝しろ」とを挟んでいた親戚の誰も、財布をこうとはしなかった。

ので善ぶっていた連の、あまりにも分かりやすい沈黙。

耐えきれなくなったように、母親がガタッと音をててちがった。 ハンカチで顔を覆い、取り繕う言葉すらなく、逃げるように居をていく。 玄関の引き戸が激しく閉まる音が、くで響いた。

親戚たちもまた、蜘蛛の子を散らすように、そそくさと法事の席をおきにして逃げ帰っていった。

嵐のような法事が終わり、夕が部を包んでいた。

散らかった座卓のには、祖母が残した領収のと、めきった茶が残されていた。 祖母は疲れたように壁にもたれ、さく息を吐いていた。

「……おばあちゃん、ありがとう」 私が隣に座り、その節くれだったを握ると、祖母は力なく微笑んだ。

「けない姿を見せちまったねぇ。でもね、音。あんたがあのに負い目をじる必なんて、爪の先ほどもないんだよ」

その、台所の勝から、由佳叔母さんが申し訳なさそうに顔をした。 親戚たちが帰る、叔母だけが片付けを伝うために残っていたのだ。

叔母は私のに正座すると、くをげた。

「音ちゃん……本当にごめんなさい。

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私、姉さんに脅されて、あんたの勤め先を教えちゃって……」

「叔母さん、もういいよ」 私が言うと、叔母は顔をげ、躊躇いがちに声をひそめた。

「あのね……姉さんのことなんだけど」

「まだ何かあるの?」

「姉さん、先、本当に仕事クビになって、区役所の福祉課に相談にったらしいのよ」 叔母の言葉に、私は眉をひそめた。

「相談にったの? なら、活困窮者の自支援とか、受けられるはずじゃない」

「受けられるのよ。活保護だって、件を満たせば通るはずだったの。でもね……姉さん、申請の続きを途で自分から破棄したらしいのよ」

「……どうして?」

叔母は苦々しい顔で、吐き捨てるように言った。

「世体よ」

を疑った。

「福祉事務所から親族に扶養照会の連絡がくのが嫌だったのよ。『あそこの奥さん、男に捨てられて活保護になったらしいわよ』って、所や昔のりいにられるのがぬほど怖かったの。それにあの子、見栄っ張りでしょう? 活保護受者になるくらいなら、『に勤める自の娘に養ってもらってる裕福な母』のポジションが欲しかったのよ。だから、音ちゃんに目をつけたの」

胃の底に、い鉛がすとんと落ちた気がした。

貧困で飢えにしそうだったからではない。 病気で助けが必だったからでもない。

あのが恐れていたのは、ただつ。

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『みすぼらしい自分』を世に晒すこと。 そして、かつて子供を捨ててまでに入れようとしたが、惨めに破綻したという現実を認めることだったのだ。

そのプライドを保つための贄として、私はぶりに呼び戻されたのだ。

「どこまでも……自分勝だね」 私の乾いた声に、叔母はただ俯いて黙り込んだ。

その夜。 片付けを終え、階の自分の部に戻ったのは夜を回っていた。 疲れ果ててベッドに倒れ込み、井を見つめていただった。

枕元のスマートフォンが、く震えた。

画面を見ると、母親からのメッセージだった。 法事の席で散々醜態を晒したあとに、まだ何を送ってくるというのか。

恐る恐るアプリをいた。 文字はなかった。 ただ、枚の画像だけが添付されていた。

荒い画質の、褪せた写真。

写っていたのは、さな公園のベンチで、プラスチックのスコップを握りしめて笑っている歳の私だった。 髪をつに結び、だらけの靴を履いて、カメラに向かって無防備に歯を見せて笑っている。

その写真の裏面を写した、もう枚の画像が続けて送られてきた。 ボールペンの掠れた文字で、こうかれていた。

『音へ。落ち着いたら、絶対に迎えにくからね。ママより』

スマートフォンのたいが、暗い部ので私の顔を照らしていた。

画面を見つめたまま、喉の奥が引きちぎれそうに痛んだ。 なぜ、今になってこんなものを送ってくるのか。 謝罪の言葉も、言い訳もなく。

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