"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第9話
歳の私が母に捨てられたあの、誰としてを差し伸べなかったたちだ。
たいが、庭の沓脱を濡らしていた。 玄関の引き戸が、ガラガラとい音をてていたのは、皆が乾杯のグラスを持った直だった。
「……遅れて、すみません」
濡れた傘を畳みながら入ってきたのは、母親だった。 黒いなカーディガンに、褪せたスラックス。 化粧気のない顔に、これ見よがしな隈が浮いている。 数、私の会社のビルので料を聞きそうとしたの、あのギラギラした品定めするような目つきは完全に消え失せていた。 背をさく丸め、いかにも「を病んで追い詰められた劇の母親」の顔を作っていた。
親戚たちの線が斉に母に集まり、次に、壁際に座っている私へと突き刺さった。
「美智子さん……よく来られましたね」 を切ったのは、越にむ父の従兄だった。 「体、具が悪いってLINEで見ましたよ。座って、何か温かいものでもにしなさい」
「ありがとうございます、お義兄さん……。皆様のお顔を見たら、ししました」 母親はハンカチで目元を押さえながら、座卓の末席にさく腰をろした。 その元を、私はじっと見つめていた。 震えるふりをしている指先が、折、私の方を盗み見るように素くく。
計算通りだ、という声が聞こえてくるようだった。
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親戚という名の「世」を方につけ、私を包囲する台はったのだ。
「音ちゃん」 従兄が、ビールグラスを座卓にコトンと置いた。 い、説教を始めるのの声。
「美智子さんから話は聞いているよ。いろいろとき違いがあったようだがね、親子の縁というのは切っても切れないものだ。ましてや、今の美智子さんは体を壊して困っているんだろう? 企業に勤めて、おばあちゃんのにタダでまわせてもらっているなら、に万や万、母親に融通してやるのがのじゃないのかい」
「そうですわよ」 向かいに座る叔母が、元をすぼめて同調した。 「お母さんが若い頃に苦労したから、今の音ちゃんがあるんじゃない。親孝ができるうちに親孝をする。それが筋というものでしょう。たいことばかり言ってちゃ、お父さんも葉ので泣いてますよ」
矢のような言葉が、方からんでくる。 全員が、自分は全な所にを置いたまま、のおと良を使って「いい」を演じている。
胃の奥がギシギシと軋んだ。 かつての私なら、周囲の目に怯え、申し訳なさに押し潰されて、ただを向いて涙をこぼしていただろう。 『私が悪いのかな』と自分を責めていただろう。
けれど、今の私の元には、耶と緒に揃えた現実の数字があった。
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私はバッグから、枚のクリアファイルを取りした。 座卓の央に、静かに滑らせる。
「……何よ、それ」 母親の声が、わずかに尖った。
「私の活費と、おばあちゃんへの活費、そして取り額の細です」 私の声は、驚くほど静だった。 のざわめきが、ふっと止まる。
「私の先の取りは万円です。そこから、このの費と費としておばあちゃんに毎万円を入れています。私の奨学の返済が毎万千円。残りは自分の保険料と通信費、そして将来の医療費のための微々たる貯です。どこに、毎万円を誰かに渡せる余力があるんですか」
親戚たちの顔が、わずかに引きつった。 具体な数字をされるとはっていなかったのだろう。
私は母親の目をまっすぐに見据えた。 「それから、お母さん。体を壊して活が苦しいとおっしゃるなら、先までの収入証と、病院の診断を見せていただけますか」
「は……? な、何言ってるのよ、あんた」 母親の目が泳いだ。
「活困窮者自支援制度や、どうしても働けないなら活保護の申請はお済みですか? 民法が定める直系血族の扶養義務は、自分の活を犠牲にしてまで相を養う義務ではありません。公支援の窓には相談にかれたんですか?」
「音ちゃん、あんたねぇ!」 従兄が声を荒らげた。
「実の母親に対して、類だの制度だの、まるで役所の窓みたいな言いがあるかい! そういう理屈じゃないだろう、族のというのは!」