"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第7話
『捨ててないって言ってるでしょ! 落ち着いたら話すつもりだったの! でも、タイミングがわなかっただけじゃない!』
鳴り散らす声が、夜の部に響く。 もう取り繕う気すらないらしい。 母親は畳み掛けるように、唾をばすような勢いで叫んだ。
『私の、子供で潰すわけにいかないでしょうが!』
胸の真んを、たい刃物で々と抉られた気がした。 痛いという覚すら麻痺して、ただ、喉の奥がカチカチに凍りついていく。
子供で、潰すわけにいかない。
歳の私は、このにとって、を潰す荷でしかなかったのだ。 迎えに来るという約束も、バースデーカードの文字も、すべては自分の罪悪を誤魔化すための、そのしのぎの嘘に過ぎなかった。
『とにかく、昔の蒸し返しはどうでもいいのよ』 母親の声は、転して事務なさに戻った。 『来からでいいから。毎万、私の座に振り込みなさい。座番号はショートメッセージで送るから』
「……断るって、さっき言ったはずだけど」
『あんたね、親に向かってその態度は何なの? 産んであげた恩を何だとってるのよ。いい? あんたが払わないなら、こっちにも考えがあるからね』
プツリと、方に通話が切られた。
元に残ったツーツーという無質な子音を聞きながら、私は座卓のにスマートフォンを放りした。
広告
の震えが止まらない。 奥歯がガチガチと音をてて鳴っていた。
翌朝、スマートフォンのバイブレーションが鳴り止まない異常な気配で目が覚めた。
刻は午。 画面を見ると、緑のメッセージアプリに数件の未読バッジがついていた。 親族数が入っている、のグループトークだった。
嫌な予がして、親指で画面をタップした。
番に投稿されていたのは、母親からの文のメッセージだった。
『親族の皆様へ。朝からお見苦しい庭の事で申し訳ありません。昨、ぶりに娘の音と会いました。私は今、体を壊してパートのシフトも削られ、々の事にも事欠く状態です。ですが、医療器のに勤めている音に相談したところ、「あんたにおを渡すくらいなら捨てる」「度と連絡してくるな」と、ひどい暴言を吐かれて追い返されてしまいました。 若くして夫をくし、苦労して産んだ実の娘から、こんな酷な扱いを受けるとはってもみませんでした。お母さん(節子さん)が、どのような教育をされたのか……しくて涙が止まりません』
吐き気がした。
巧妙だった。 自分が音信通だったことには切触れず、ただ『病気の母親を見捨てる血な娘』と『それを育てた祖母の責任』だけを調している。
広告
そのメッセージのには、すでに親戚たちからの返信が連なっていた。
『美智子さん、変でしたね……』 『音ちゃん、いくらなんでも親に向かってそんな言い方はないんじゃないかい?』 『今どきの企業なら、取りだってそれなりにあるだろう。に数万面してやるのが、のというものだよ』 『育ててもらった祖母への謝は結構だが、みの親を無にするのは世体が悪すぎる。の恥だよ』
々に正論を振りかざす親戚たち。 彼らは、私が歳のに母親が消えた、誰として引き取ろうとしなかったたちだ。 祖母がでをげ、私の学費のために親戚にをげて回った、たくあしらった連だ。
全な所から、円も銭を切らずに、ただ「徳」と「世体」というを投げつけてくる。
胃がキリキリと痛み、息苦しさに胸を押さえた。 返信を打とうとして、指が止まる。 何をいても言い訳に見える。 「放置された」と叫んだところで、連は「それでも親だろう」と返してくるに決まっているのだ。
その、会社に着いても仕事がにつかなかった。 エクセルに入力する数字が何度もに見え、受話器を取るが震えた。
「音、ちょっといい?」
昼休み、声をかけてきたのは同期の耶だった。 隣の席で、私の異様な顔にずっと気づいていたらしい。
耶は私の腕を掴むと、気のないへと続く非常階段の踊りへ引っ張っていった。